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『【講演A】じんましん 〜知っているようで知らない?〜』
数時間から最長3日で消滅 ステップを踏みながら診療
じんましんは漢字で「蕁麻疹」と書き、別名で「刺草(しそう)」や「蕁麻(じんま)」といわれる野草「イラクサ」に由来します。その葉の表面にはトゲのようなものがあり、触れると、じんましんのような皮膚症状を起こします。
じんましんは、一時的にかゆみを伴い皮膚が赤く盛り上がりますが、ほとんどの場合は数時間から24時間、最長3日間で消えます。何らかの刺激が加わって、ヒスタミンなどの物質が血球から放出され神経が刺激されることで、かゆみが起こります。そして、血管が刺激され、血管が膨らんだところから物質が漏れ出て、皮膚が赤く盛り上がることが分かっています。
診察では、かゆみを起こす他の皮膚病とじんましんを鑑別し、原因となる刺激の特定を進めます。さらに、その形状やでき方を見ていき、虫刺され状や輪っか状、地図状、点状など、それぞれの特徴から診断を進めます。ただ、病院来院時ははっきり出ていたのに、待ち時間の間に消えることもあります。そのため最近では、スマートフォンなどで撮った写真を参考にすることがあります。また、じんましんの特徴である数時間で跡形なく消えることを確認するために、原始的ですが、マジックで赤く盛り上がった患部をかたどったりすることもあります。
そしてあまり知られていませんが、検査で原因が特定できるじんましんは、全体の2〜3割程度にとどまります。
治療の第1ステップは、抗ヒスタミン剤を内服します。もし悪化因子や誘因となる因子、刺激が分かれば、それらを避けることも大切です。そして、2週間後に来院してもらい、治っていなければ、飲み薬を倍に増やし、その後も効果がない場合は、H2受容体拮抗(きっこう)薬などを併用します。それでも効果がないときは、副腎皮質ステロイド薬の少量の内服、免疫抑制剤の追加が推奨されています。
このように、ステップを踏みながら診療を進めていきますが、治療の過程で、患者さんの診療満足度と医師の効果測定にズレが生じることもあります。そのため、患者さんの日常に与える影響やじんましんの程度を点数化した日誌を付けてもらうことで、治療に関するコントロール状態を客観的に見ようという試みも行われています。
最近は、有効率が非常に高い新しい生物学的製剤の注射薬も使えるようになりました。もし、じんましんについて疑問があれば、日本皮膚科学会の公式ホームページの「Q&A」コーナーをご覧ください。