肥後医育塾公開セミナー

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令和元年度 第1回公開セミナー「食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、じんましん、薬疹」

【講師】
熊本大学大学院生命科学研究部
皮膚病態治療再建学講座
診療助手
本多 教稔

『【講演@】アトピー性皮膚炎の新常識』
保湿などスキンケアが大切 注射薬使った治療も効果的


  アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返し、かゆみのある湿疹を長期間起こす病気です。年齢によって症状が出る場所が異なり、いずれも左右対称に出てきます。
 皮膚は外界と体内の環境のバリア機能を担っています。しかしアトピー性皮膚炎を発症すると、表皮の最も外側の皮脂膜が
欠乏し、その下の角質層が荒れて肌が乾燥しやすくなり、バリア機能が低下します。
 低下する理由は、角質層のタンパク質異常などの遺伝や、汗、ほこり、ダニなどの環境、免疫細胞「Th2」の特異的な活性化、皮膚の常在菌の割合など、複合的な要因によるものとされています。バリア機能が低下すると、炎症を起こす物質が放出され、Th2が活性化して、かゆみを起こす物質を放出します。かゆい部分をかくと、さらにバリア機能が低下するという、悪循環の繰り返しになります。
 治療にはまず、保湿などのスキンケアが大切で、軟こうやクリーム、ローションなど、さまざまなタイプの保湿剤を使って行います。そして、ステロイドや免疫抑制剤の塗り薬を使った薬物療法を中心に治療します。補助的に飲み薬などを用いることもあります。
 以前は「リアクティブ療法」といって、症状が悪化した時に塗り薬を塗って、見た目が良くなったらやめ、悪くなったらまた塗る、ということを繰り返していました。しかしこれでは、長期になると皮膚が厚くなり、黒ずむこともありました。そこで現在は「プロアクティブ療法」という治療法が採用されています。悪い時にステロイドの外用薬を塗ることは同じですが、見た目が良くなっても、潜在的な炎症を抑え、症状の再燃を抑えるために、週2回など、塗り薬の頻度を徐々に減らしていくという方法です。
 また重症の患者さんには、昨年8月から、Th2から出る特異的な物質を抑える新しい注射薬が使用可能になりました。臨床試験では約8割の人に効果がありました。
 この薬は2週間に1回、注射を打たなくてはならないため通院が必要で、15歳以上の人しか使えないという条件があります。安全性は高いですが、副作用として、目の充血やかゆみといった結膜炎の症状が出ることもあります。ただし、それは目薬によって抑えることができます。
 こうした治療により、アトピー性皮膚炎は症状を抑えることができるようになってきました。