肥後医育塾公開セミナー

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平成30年度 第3回公開セミナー「ワクチンのこと 正しく知りましょう」

【講師】
熊本県健康福祉部
健康危機管理課 課長補佐
小山 宏美

『講演@ 予防接種は縁の下の力持ち〜くるしい感染症からまもってくれる予防接種のお話だモン〜』
死に至ることもある感染症 ワクチン接種で免疫力高めて


  感染症は、細菌やウイルス、寄生虫などのさまざまな病原体が体内に入り、増殖することによって発病し、他の人に伝染します。免疫力を十分に持っていて発病しない人もいますが、発病すると、抗生物質や抗ウイルス薬などの薬の力を借りて治療しなければなりません。
 感染経路には、他人のくしゃみやせきなどによってウイルスが飛んでくる「飛(ひ)沫(まつ)感染」、ウイルスが漂っている空間を共有しただけでうつる「空気感染」、手で触ることによる「接触感染」、汚染した手などを介した「経口感染」があります。感染予防には、消毒、手洗い、衛生的な環境づくりや免疫力の強化が有効です。免疫力を強化するには、適度な運動をしたり、十分な休養を取ったりすることに加え、ワクチンで予防接種を行うことが大切です。
 予防接種の効果を見てみると、1950年代と現在を比べて、現在は百日ぜき、ジフテリア、破傷風、麻疹(はしか)、ポリオ、日本脳炎など、多くの感染症からたくさんの人の命が救われていることが分かります。天然痘は56年以降に国内で、その後、世界でも患者さんの発生はなくなりました。
 予防接種には、こうした感染症にかからない、病気になっても症状が軽いなど、個人防衛の効果があるのに加え、社会に感染を広げず、またその結果、感染する機会を減らすという社会防衛の効果もあります。そのため、集団保育への参加前や就学前に予防接種を済ませておくことは非常に重要になります。
 予防接種には、予防接種法に基づき接種の努力義務が課されている「定期接種」と、同法が適用されない「任意接種」があります。定期接種は受けられる時期などが決められており、費用の全部、または一部が国や自治体により助成されます。「任意接種」は希望者の自己負担による予防接種ですが、対象となる疾患は法律の区分によるものであり、防げる病気の重大性には違いはありません。もし「予防接種による副反応が原因で苦しんだ」と認定された場合は、制度は異なりますが、それぞれに救済制度もあります。
 感染症には合併症のリスクが伴い、重症化して死に至る場合もあります。また、感染症にかかると、家族内での感染をはじめ、精神的にも経済的にも大きな負担となることがあります。
 今後とも予防接種へのご理解、ご協力をよろしくお願いいたします。