肥後医育塾公開セミナー

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平成30年度 第2回公開セミナー「私たちの未来は“百寿社会”?」

【講師】
健軍熊本泌尿器科 院長
橋 渡

『講演B男性にも起こる更年期障害〜男性ホルモンの働きについて〜』
肉体・精神の両面に作用 20代を境に分泌量が低下


   男性は精巣から男性ホルモン「テストステロン」が出て、生殖臓器や、筋肉質の体格を形づくり、造血作用にも関係します。実はアロマターゼという酵素によって、テストステロンは女性ホルモン「エストロゲン」に変化します。また、男性にも女性にも副腎からは「アンドロゲン」という男性ホルモンが出ています。
 男性ホルモンは、筋肉や骨の質を高め、内臓脂肪の増加を防ぐほか、血圧を下げ、糖尿病を予防し、運動機能を向上させる働きがあります。意欲やチャレンジ精神、公平や公正を求める、社会の中での協調性など、精神的な活動にも働きます。
 個人差がかなりありますが、男性ホルモンは20代をピークに低下し、60歳以上で2割、70歳以上では3割、80歳以上では5割以上の人に低下が認められます。日本の研究では、40〜50代の働き盛りの年代では60代より男性ホルモンの分泌が低いという結果もあります。 
 男性ホルモンが低下すると、性機能だけでなく、肥満や筋力低下、メタボや糖尿病、抑うつなどの症状が出てきます。女性の更年期と同様、イライラや不安、過敏や疲労感、記憶力の低下や集中力の低下などが起こります。体の方ではおなかが出てきて、筋肉の痛みやしびれ、発熱やほてり、骨粗しょう症も起こりやすくなります。男性ホルモンの分泌が低いほど寿命が短くなるという統計データもあります。こうした男性更年期障害のことを、LOH(ロー)症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼びます。
 男性ホルモンを保つポイントは、運動と、睡眠時間の確保、それからストレスをためないことです。リラックスして仲間や友人と楽しく過ごす、ワクワクするイベントへの参加や、自分を表現する、あるいは利他的な行いなどでも男性ホルモンが上がるといわれています。
 食事では亜鉛や、ニンニクなどのネギ類が良いといわれます。その他、ED(勃起不全)治療薬やサプリメント、漢方薬も有効という報告もあります。
 LOH(ロー)症候群に対する治療法としてはテストステロン補充療法があります。海外ではさまざまな補充療法が認められていますが、日本では塗り薬と注射の2つの方法です。それでも約7割の方が治療効果を実感しています。ただ、これには副作用もあるため、専門医への受診が安心です。男性更年期障害について正しく理解し、中高年になっても男性ホルモン維持を意識して元気な生活を目指していただければ幸いです。