【講師】 |
『講演@百寿社会と幸福寿命』
共感やときめきを大切に 規則正しい生活も心掛けて
2016年の日本人の平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳でした。4人に1人が65歳以上の高齢者で、2040年には3人に1人の割合になるとみられています。ちなみに2007年生まれの人の半数は100歳以上生きると推計され、「百寿社会」の到来が予想されています。
五体満足で自立して生きられる年齢までを「健康寿命」と呼び、2013年の統計では男性が約71歳、女性が約74歳です。平均寿命までの期間は誰かの世話にならなければいけませんが、この期間は全く短くなりません。
ただ、これは平均の話です。介護が要らない高齢者は8割を占めています。また100歳以上の方を「センチネリアン」と呼びますが、日本には約7万人おり、その数が爆発的に増えているところです。
長生きをする上では、高齢者の虚弱「フレイル」と、糖尿病が問題になります。生活習慣が乱れ、運動をせず、脂っこいものを食べていると肥満になります。血糖値や血圧、中性脂肪などの値が上がり、メタボリックシンドロームが起こります。血管が傷つき、糖尿病になり、腎臓が悪化するほか、脳卒中や心筋梗塞、認知症のリスクも高まります。さらに肥満の方は、がんになりやすくなります。
このドミノ倒しのような現象が起こるのは、細胞内で酸素を使い、糖分や脂肪からエネルギーとなる物質をつくっているミトコンドリアの活力が失われるためです。ミトコンドリアを元気にするには、食事のカロリー制限と適度な運動が効果的です。
おなかが減ったときグーと鳴る作用の「グレリン」というホルモンや、運動をすると心臓から出る「ナトリウム利尿ペプチド」というホルモンなどがミトコンドリアを元気にしてくれます。体細胞のミトコンドリアが元気になれば、体全体が元気になるのです。
人間の腸内にすむ100兆個もの細菌の働きも重要です。腸内細菌がつくるいろいろな代謝産物がホルモンのような働きをするためです。そのため、腸内細菌の餌となる食物繊維が多く含まれる食品を食べると、腸内環境が良くなります。
また、パートナーをいとおしく思える「オキシトシン」も大事です。これは触れ合いによって出てきますので、それを応用したロボットなどの研究が進められています。
寿命には平均寿命や健康寿命のほかに「幸福寿命」もあると思います。幸福寿命を延ばすには、人に共感すること、いくつになっても心をときめかせること、日光を浴びながら歩くなどの規則正しい生活を通じ、脳を刺激しながら体全体を健康に保つことが大切です。
年を取ると一人では幸せになれません。幸福は人と人の「間」にある。だから、人を「人間」というのだろうと思います。