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肥後医育塾公開セミナー

平成30年度 第1回公開セミナー「治す! 認知症」

【講師】
熊本大学大学院生命科学研究部神経内科学分野 講師、熊本大学医学部附属病院アミロイドーシス診療センター 副センター長
植田 光晴

『講演4 アルツハイマー病の治療の最前線』
対症療法で認知機能が改善 周囲のサポート受けやすく


   高齢社会になり、アルツハイマー型認知症は増えています。その最も大きな危険因子は加齢とされていますが、この認知症は生理現象ではなく、病気なのです。脳の神経細胞が失われ、脳が萎縮することにより、もの忘れや場所が分からない、集中力がなくなる、言葉が出ない―などの症状が出て、日常の動作が困難になっていきます。
 これまでの研究により、病気のメカニズムが解明されてきました。まず、Aβ(エーベータ)アミロイドと呼ばれるタンパク質が頭の中にたまり、脳にシミを作ります。この状態がしばらく続くと2つ目のタンパク質であるタウが脳にごみを作ります。そうすると、神経細胞が失われていき、それが原因で、もの忘れや徘(はい)徊(かい)などの症状が出てきます。
 この2種類のタンパク質がたまりやすいのは、記憶に関係する脳の側頭葉と、場所の認識に関係する頭頂葉とされます。こうしたタンパク質のごみは、最近の研究によると、発症の20〜30年前に既に脳にたまり始めていることが分かってきました。
 さて、認知症の診断の際には、記憶力や判断力を見るテストを行います。アルツハイマー型認知症の場合、問診で本人がもの忘れなどないよう取り繕ったり、ごまかしたりする傾向が特徴として現れます。そのため診断では、根治可能な他の認知症が隠れていないか、手足や歩き方をチェックし、各種画像検査や血液検査をきちんと受けることが重要です。
 現在、アルツハイマー型認知症を根本的に治療する方法はありませんが、対症療法ながら、認知機能を改善する薬は開発されています。早期に診断されることで、病状に適したケアを早期に受けることができ、周囲のサポートも受けやすくなります。早期だと、本人の意思をきちんと確認することもできます。
 アメリカやイギリス、オランダでは近年、アルツハイマー型認知症の有病率が20〜40%減ってきているという報告もあります。その背景には、生活習慣の改善や、生活習慣病の予防や治療の進歩が関わっているといわれています。
 医学は進歩しており、根本的原因であるタンパク質のごみを取り除く治療法が開発されつつあります。ただ、病院で使うにはもう少し時間がかかるでしょう。
 今できることは、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの適切な治療を受け、食事、運動、睡眠などを改善し、アルツハイマー型認知症に備えることです。