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肥後医育塾公開セミナー

平成30年度 第1回公開セミナー「治す! 認知症」

【講師】
熊本大学大学院生命科学研究部神経内科学分野 脳血管障害先端医療寄附講座 特任教授
中島 誠

『講演3 脳血管障害に伴う認知症ケア』
食事に注意し体を動かして 喫煙やめればリスクが低下


   脳血管性認知症は大きく2つに分けられます。
 1つは脳の血管が突然詰まったり破れたりする「脳卒中」に伴って、理解力や記憶力が落ちていくタイプです。脳卒中はダメージを受ける脳の場所によって、麻痺やしゃべりにくさなどさまざまな症状が起こりますが、その一つとして認知症のような症状が現れるのです。
 もう一つは、髪の毛ほどの太さしかない小血管が全体的に少しずつダメージを受け、脳血流が悪くなるために脳が働かなくなるタイプです。小血管にダメージを与えるのは、加齢やたばこ、高血圧などがあり、そのほか、血管の壁にたまる「アミロイド・ベータ」というタンパク質も原因となります。この物質は脳内にたまることによってアルツハイマー病も引き起こします。このため、脳血管性認知症とアルツハイマー病は区別が難しいことが多く、混合型認知症になることもあります。
 脳血管性認知症はある程度予防ができる病気です。アルツハイマー病と脳血管性認知症の危険因子は、たばこや高血圧、糖尿病、心房細動、運動不足、ストレスなど共通するものが多いので、一方の予防がもう一方の認知症予防にもつながります。食事に気を付けながら、必要に応じて血圧や血糖の治療を行い、できるだけ体を動かし、飲酒は適量を心掛けましょう。たばこはがんだけでなく、認知症の危険因子でもあります。たばこを吸う人は認知症のリスクが2.3倍高く、特に脳血管性認知症については2.9倍のリスクになると報告されています。しかしたばこをやめれば、数年でそのリスクが下がるのです。
 脳卒中は繰り返すうちに認知症の症状が進むことが多いので、一度脳卒中を発症したら再発を防ぐことが大切です。
 脳血管性認知症では比較的、記憶や人格が保たれます。一方で麻痺などの身体症状や、言葉や動作、物事の認識が難しくなる高次脳機能障害、ささいなことで泣いたり笑ったりする「感情失禁」を伴うこともあります。
 脳血管性認知症の人にしばしば起こる「意欲低下」にも注意が必要です。意欲が落ちると、体力も精神活動も衰えます。そうすると疲れやすく、意欲がさらに低下するため悪循環に陥り、最終的に寝たきりになってしまう危険もあります。
 認知症の方がより良い暮らしをするために、どうすべきか―。認知症は誰もがかかる可能性のある病気です。ご本人の人格を尊重し、自分でできることはなるべく自分で続けていただきながら、周囲の人が支えていくことが大切でしょう。