肥後医育塾公開セミナー

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平成30年度 第1回公開セミナー「治す! 認知症」

【講師】
熊本大学大学院生命科学研究部神経内科学分野 分子神経治療学寄附講座 特任教授
中根 俊成

『講演2 レビー小体型認知症、パーキンソン病に伴う認知症の治療』
薬の投与とリハビリが根幹 多職種連携でのケアも展開


   レビー小体型認知症は、脳の神経細胞に「レビー小体」と呼ばれるタンパク質がたまることによって起こる病気です。患者数は国内で10万人を超え、増加しているといわれるパーキンソン病も、脳幹にレビー小体がたまって起こります。この2つの病気は、ほぼ同じものと考えてよいでしょう。
 ただ、パーキンソン病に伴う認知症では主に、震えや筋肉の固まり、表情に変化が乏しい、体が動きにくい、転びやすくなる─などの運動症状がまず現れ、1年以上たつと認知症状が加わってきます。
 レビー小体型認知症の中核症状は認知機能がはっきりしている時と悪い時が、日によって時間帯によって極端に動揺するのが特徴です。そして実際にはいない人や動物、虫などが見えるといった幻視、簡単にいうと見間違いの症状が見られます。加えて、パーキンソン病のような運動障害や、レム睡眠行動障害といって、本人は寝ているのに大声で話す、何かをたたく、食べるなどの行動が起こります。
 そのほか、薬に過敏に反応する、悲観的になり、うつ状態になる、嗅覚が鈍くなるなどの症状が現れることがあります。
 レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症と並んで3大認知症といわれますが、認知症のおよそ半数を占めるアルツハイマー型では脳の萎縮があるのに対し、レビー小体型には、それがあまりありません。
 レビー小体型の治療は薬とリハビリが根幹になります。さまざまな種類の薬を飲んでもらい症状をコントロールしますが、薬に過敏に反応する傾向があるため、その効果は一人一人で異なることをよく経験します。
 レビー小体型認知症とパーキンソン病の治療は、脳神経内科だけでなく、精神科とも協力し、地域ケアスタッフをはじめ多職種の方々が連携してケアが行われるようになってきました。こうしたケアや家族の対応が治療においてとても大事です。
 家族の対応のポイントは、患者さんが幻視で見えているものを否定せず、じっくり話すことが重要。部屋の明るさやカーテンなどはシンプルにしましょう。転倒しないよう体が向いている方にだけ歩かせる、落ち着いて声を掛ける、夏は適度の塩分と水分の摂取が大切です。また、小さな段差や電気コードなどで転ばないよう生活環境を整え、裾が長い服装やサンダル、スリッパなどは避けた方がよいでしょう。家族の方は一人で無理をせず、助けを借りられるようにしておくことが肝要です。