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肥後医育塾公開セミナー

平成30年度 第1回公開セミナー「治す! 認知症」

【講師】
熊本託麻台リハビリテーション病院理事長
平田 好文

『講演1 外科的治療ができる認知症疾患 〜特発性正常圧水頭症と慢性硬膜下血腫〜』
手術によって改善見込める 術後は自発的リハビリ重要


   すり足や小刻みな歩き方になるなどの「歩行障害」、うつ状態でやる気が起こらないなどの「認知障害」、トイレまで間に合わない「尿失禁」―。これら3つの症状がそろうと、特発性正常圧水頭症(iNPH)や慢性硬膜下血腫が疑われます。
 iNPHは頭の中に水(髄液)がたまる病気です。脳は髄液の中に浮かんでおり、その液は頭の中で産生され、脳の表面を回ると吸収される仕組みになっています。しかし、これがうまく吸収されないと、髄液が脳を圧迫します。
 特発性というのは医学用語で「原因がよく分かっていない疾患」を指しますが、基本的な原因には加齢があり、その他、高血圧や糖尿病、動脈硬化も関与しているといわれています。
 発症は70代後半〜80代前半に多く、認知症高齢者の5〜10%を占めるという統計が出ています。iNPHの症状に似た病気に、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、血管性パーキンソン症候群、進行性核上性麻痺(まひ)、レビー小体型認知症などがあるため、しっかりと鑑別しなければなりません。
 iNPHの患者さんの症状として、股を左右に広げて歩く開脚歩行のほか、脳内の血流パターンにも特徴があります。治療は、画像診断と共に、試験的に脳にたまった水を抜くタップテスト(髄液排除試験)を行います。これは局所麻酔をして10分間程度で済みます。
 タップテストで症状が改善すると、iNPHの可能性が高いということになります。ただ、この時点の症状の改善は1カ月も続かないため、脳にたまった水を腹腔へ流すシャント手術を行います。手術法には、脳の中から流す方法と、腰の髄液から流す方法があります。
 脳からの場合は特に高齢者の中に脳出血のリスクがあるため、最近は腰にチューブを入れて腹腔に髄液を流すことが増えています。ただ、腰の変形がある場合などは脳から流します。
 治療の効果はおよそ80%。効果が出ない20%の原因は、ほかの病気との合併や、術後の生活に問題がある場合があります。術後は「太らない」「転ばない」「閉じこもらない」の、生活3原則を守ることが大切です。
 最後に慢性硬膜下血腫について話します。これは脳と骨の隙間に血がたまる病気で、原因の多くは外傷です。局所麻酔をして頭に穴を開け、血を抜く手術を行います。外科的手術を含め、認知症の治療は進んでいますが、どの疾患でも術後は自発的にリハビリを行っていただくことが重要です。