【講師】 |
『講演@ 肺がん治療の最前線 外科治療』
体に負担の少ない手術も
2017年のがん統計予測(がん情報サービス)によると、日本における肺がんの罹(り)患(かん)数は年間12万8700人。がんの中では第3位。そのうち死亡数は年間7万8000人に上り、第1位という状況です。呼吸器外科の手術件数は年間7万7070症例で、肺がんが3万8085症例と半数を占めています。熊本大学医学部附属病院の呼吸器外科でも肺がんが半数を超え、年々増加傾向にあります。
肺がんの患者さんに対し、手術が可能であるかを判断するために、まずCTやPET、MRIなどの画像検査により、病変の広がりを知ります。そして、手術で全てのがんを取りきれるかどうかを検討します。
ただ手術は、それなりに体に負担がかかりますので、心電図や肺活量などで心肺機能を知り、患者さんが手術に耐えられるか、体力評価を行います。そして最終的に、主治医が病気について説明した上で、本人や家族の希望を聞きます。この点が手術適用では最も大事になります。
病変が大きく局所進行性の場合は、胸部を25センチほど開け、胸骨を1本切る開胸手術を行います。比較的小さければ胸腔鏡(きょうくうきょう)手術で切除します。この手術は胸部に1.5センチの穴を2カ所、4センチの穴を1カ所、計3カ所開けますが、開胸に比べ体への負担が少なくて済みます。
肺の切除範囲もがんの大きさによって決まります。肺のほんの一部分を切除する部分切除やそれよりやや大きい区域を切除するのが「縮小手術」です。片肺の半分(左肺)ないし1/3(右肺)を切除する肺(はい)葉(よう)切除が「標準手術」、がんがろっ骨にまで広がっている場合など、広範囲な切除を行うのを「拡大手術」と呼びます。
今は手術箇所を立体的に映し出す3Dモニターを見ながらの手術が可能になり、安全で確実に行えるようになりました。
外科治療の成績は年々上がっております。5年生存率、つまり肺がんが治った割合(第30回日本呼吸器外科学会癌登録合同委員会)を見ると、1989年の47.8%に対し、2004年は69.6%と上がり、現在ではこの治療成績はもっとよくなっています。
縮小手術の場合、最近は70歳代のケースでも、1週間程度の入院期間で職場復帰ができる事例は珍しくありません。最近は体に負担の少ない手術法が開発されてきましたので、期待していただいていいと思います。