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【講師】 |
『現場からの報告』
若年から取り組みを
阿蘇郡蘇陽町は人口約五千人、高齢化率は二七%です。痴呆対策は、従来は病院か福祉施設の仕事とされてきましたが、平成八年度に日赤熊本健康管理センターのモデル地区指定を受け、町による予防対策事業を実施しました。
対象は六十代百七十九人、七十代百三十四人、八十代三十八人の計三百五十一人。浜松方式によるかな拾いテスト(一次調査)で合格点に達しない人は百四十一人でした。うち毎日農業などで働いている六十代、七十代が七六%に上り、若年からの取り組みの重要性を痛感しました。
MMSテスト(二次調査)では八十八人中、軽度二十一人、前期痴呆七十一人の結果で、軽度・前期痴呆の多さに驚きました。
この結果を受け週一回、地区公民館で「脳いきいき教室」を始めました。ゲームや歌、陶芸などの手作業、園児との交流などで脳に刺激を与える取り組みです。三カ月間行った結果、症状に改善が見られたのが十五人、変化なしが二十五人、悪化が三人でした。
ここで気付いたのは、耳の聞こえが悪い人ほど痴呆になりやすい環境にあるということです。コミュニケーションが不自由なため外部との交流が減り、家族との会話も途絶えがちになっています。そこで町が赤外線補聴システムを導入、高齢者の会合などに使用することで会話や笑顔が戻るようになりました。近く完成する町役場庁舎にも整備されることになっています。
町では現在も痴呆対策を進めていますが、痴呆性高齢者と接していると、家の中で相当悩み苦しんでいることが分かります。また、だれもがぼけたくないと思うものの、痴呆に関する知識の少なさも共通しています。今後は痴呆を生活習慣病の一つと考え、本人はもちろん、家族や地域を含めた町全体で予防対策を進める必要があります。