肥後医育塾公開セミナー

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平成9年度 第3回公開セミナー「高齢者痴ほうとそのケア」

【講師】
(日赤熊本健康管理センター 健康福祉係長)
上村妙子

『現場からの報告』
趣味通し右脳活性化


   日赤熊本健康管理センターでは、痴呆(ほう)予防事業として昨年七月から「脳いきいき教室」、同八月から「脳いきいき外来」をスタートしました。私自身、二年前に金子満雄医師(浜松医療センター)の考え方を学び、保健婦として予防検診の必要性を感じていました。
 いわゆる「浜松方式」を取り入れた脳いきいき外来は、まず家族に生活状況を三十項目にわたってチェックしてもらい、脳機能を調べる「かな拾いテスト」や「MMSテスト」を実施。そこで症状が見られた人は専門医の診察を受けます。さらに本人や家族に対してデイケアの利用や生活改善をアドバイスしています。
 昨年一月から今年一月までに脳いきいき外来を訪れた百人(県外含む)を見ると、約半数に痴呆症状が見られ、うち軽度十六人、中度二十六人、重度十人という結果でした。本人の自発的意思で外来を訪れる場合は正常の人が多く、家族が心配して相談される場合は中重度と診断されることが多いようです。
 脳いきいき教室では週一回、高齢者にスポーツや絵画、料理などの趣味活動を通して、感性や情緒をつかさどる右脳の訓練を行っています。痴呆症状のある人には、全員に教室への参加を勧めています。
 中度の症状がある八十歳代の男性は、家族ぐるみで散歩や料理などの活動を実践した結果、自分から考えて行動するまでに脳機能の回復が見られました。
 今後の課題は、痴呆の早期発見・早期対策のシステムを地域でも普及させることです。昨年十月には、保健婦や医師、福祉関係者による痴呆予防研究会を発足させました。年を取ればだれもが脳機能が低下し、自立には家族の支援が必要になります。目的を持って、生き生きとした人生を送ることが、ぼけ防止につながると思います。