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『講演(3) 慢性腎臓病における食事療法のコツ』
薄味でもおいしい食生活を
塩分は一日6グラム未満に
慢性腎臓病の進行を抑えるためには糖尿病や高血圧をきちんと管理する必要があります。そのためには食事療法はとても重要です。 体重管理も大切で、標準体重(キログラム)は身長(メートル)×身長(メートル)×22で求められます。一日の必要エネルギー量の計算式は標準体重(キログラム)×25〜30(キロカロリー)ですが、慢性腎臓病(CKD)になると標準体重(キログラム)×25〜35(キロカロリー)と、少し高めの設定になります。
また、一日の必要タンパク質量の計算式は通常、標準体重(キログラム)×1.0〜1.2(グラム)。CKDになると標準体重(キログラム)×0.6〜1.0(グラム)になります。塩分量は18歳以上の男性で一日当たり8グラム未満、女性で7グラム未満が推奨値ですが、CKDになると3グラム以上6グラム未満になります。日本人の平均塩分摂取量が一日10〜11グラムですので、その約半分です。
必要な栄養量から食品構成を
CKDの食事療法の基本はタンパク質制限、エネルギーの確保、塩分制限、カリウム制限になります。食事は、魚や肉などの良質のタンパク質を腎臓の機能に応じた量を取り、塩分の多い汁物を減らして、油や砂糖でエネルギーを補います。ただし、糖尿病の場合は砂糖の代わりに、デンプンや春雨を使うこともあります。
CKDのステージによって食事療法の内容も変わります。食事療法を開始する際は、医師から一日の栄養量について指示があります。それを受けて栄養士が、一日の食品構成を示します。その食品構成に沿って、患者さんは食事を作るということになります。
タンパク質というと、肉や魚を思い浮かべますが、実は砂糖と脂類を除くほとんどの食品にタンパク質が含まれていますので、取り過ぎには十分注意が必要です。低タンパクのご飯・うどん・そば・食パンなど、特別な食品を使用してもよいでしょう。
塩分計算はしょうゆ・みそなどの調味料と、ハムやかまぼこ、漬け物などの加工食品について行います。食材にも一日分で1グラムの塩分が含まれますので、医師から指示された量より1グラム少なめの塩分を使いましょう。調味料は計量スプーンで計って小皿に入れて、かけずにつけて食べるなど、工夫してください。減塩調味料を利用するのも一つの手です。
減塩の工夫としては、だしのうま味を生かす、酢やレモンなどを使う、香辛料や香味野菜を使う、などでおいしく食べられると思います。ただし、市販の顆粒だしの中には、塩分が含まれているものがありますので、注意して選んでください。それから加工食品を使う際は、調味料を控えるようにしましょう。
食事の工夫はできることから
調理の工夫では、例えば照り焼きなどは下味をつけずに表面にたれをからめるように作ったり、みそあえより、みそかけの方が塩分を感じやすくなります。
カリウムは野菜や果物、肉や魚などのタンパク質を多く含む食品にたくさん含まれていますので、一日に食べる食品量を守ることが大切です。また、カリウムは水に溶ける性質があるため、野菜などは小さく切って、水にさらし、ゆでこぼすとよいでしょう。ただし、蒸し料理や電子レンジ調理ではカリウムは減りませんので気を付けてください。
食事の工夫は、できることから実行していきましょう。汁物は一日1杯、汁は半量にする。漬け物や佃煮は控える。必要のない調味料は使わないようにし、薄味に慣れることが長続きするコツです。
制限のある中でもストレスをためないように、毎日の食事を楽しむ心がけをしていただきたいと思います。