肥後医育塾公開セミナー

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平成26年度 第3回公開セミナー「慢性腎臓病と栄養」

【講師】
熊本大学医学部附属病院 代謝・内分泌内科 助教(医局長)
本島 寛之

『講演(2) 熊本における糖尿病対策〜ブルーサークルメニューって、知ってますか?〜』
医療・栄養面で啓発活動を推進


  熊本の男性25%がメタボ
 熊本県の糖尿病とその予備群を加えた数は成人の4人に1人の割合に上ります(2006年度調査)。協会けんぽのデータでも男女とも、メタボリックシンドローム(メタボ)と糖尿病のリスク保有率が高い県民であることが分かっています。食べ過ぎ、塩分や脂肪の取り過ぎ、過度の飲酒、喫煙、運動不足、不規則な生活などが原因で、肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病になります。これらの疾患を放置すると、心筋梗塞や脳梗塞、慢性腎臓病(CKD)を起こします。健康な人に比べメタボの人は、これらの重篤な疾患にかかる危険性が高くなります。
 かつて男女とも平均寿命が全国1位だった沖縄県では1995年以降、男性の順位が下がり、2000年には26位に落ちました。「沖縄クライシス」と呼ばれ、メタボによる働き盛りの男性の死亡増加が原因でした。体格指標BMIは、体重(キログラム)÷身長(メートル)÷身長(メートル)で求められ、25以上が肥満とされます。沖縄では成人男性の半分が肥満で、メタボ該当者は25%に上りました(04年調査)。
 さて熊本県では、男性の25%がメタボ。11年度のデータでは、男性は30歳代の50%、40歳代の40%が肥満です。また、男女とも血糖値が高い人が多く、生活習慣を改善しないと糖尿病や高血圧からさまざまな合併症やCKDを引き起こす人が増える恐れがあります。まさに「熊本クライシス」の危険をはらんでいるのです。熊本県は人口当たりの人工透析患者が多く、全国2位でした(2012年)。
 糖尿病の合併症は神経障害、目が悪くなる網膜症、腎症、心筋梗塞や脳梗塞、歯周病、認知症、骨粗しょう症などさまざまなものがあります。合併症には起こる順番もあり、神経障害、網膜症、腎症の順に早く症状が出るようです。
かかりつけ医を「連携医」に
 糖尿病の予防は、QOL(生活の質)と健康寿命の確保にとても大切です。糖尿病になっても、血糖、体重、血圧、中性脂肪やコレステロールを良好に管理することで合併症の発症や進展を阻止することができます。
 糖尿病患者は現在、非常に多いため、糖尿病専門医だけでは手が足りない状況です。そこで熊本県では、糖尿病診療について研修を積まれているかかりつけ医を「県糖尿病対策推進会議連携医」に認定しています。大学病院や地方中核病院の「糖尿病専門医」と、「連携医」が連携して患者を診療し、糖尿病や合併症の重症化の予防に努めています(糖尿病連携医制度)。
ヘルシーな外食メニュー開発
 現在、外食・中食(総菜など)は食費の45%を占めるほど増えており、一般的に高カロリー・高塩分・高脂肪で野菜が少ないため、注意しないと栄養バランスが偏ってしまいます。そこで、県栄養士会の管理栄養士と外食・中食の調理担当者が協力し、おいしくヘルシーな「ブルーサークルメニュー」を開発しています。1食600キロカロリー未満、塩分3グラム未満で、栄養バランスを整えた外食メニュー。県主導で推進しており、県内68店舗で計113メニューを提供しています。外食が多い2型糖尿病のビジネスマンに、このメニューに準じた食事をしてもらったところ、体重が約10キログラムも減り、血圧、中性脂肪や総コレステロールの値が良好にコントロールされました。
 今年はレストランだけでなく、化血研など地元大手企業の社員食堂にも開発してもらい、普及拡大を図っています。また、熊本大学の代謝内科を中心として、糖尿病や生活習慣病を減らすために「ブルーサークル2050」というNPO団体をこの春に設立しました。今後もさまざまな糖尿病の予防啓発に取り組んでまいります。