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『《講演A》行政窓口における女性の相談』
6割は「家族」のこと
熊本市こころの健康センターでは常時、心の相談を受けています。今年4月から6月までの3カ月間の相談件数は、電話相談が337件、面接相談が145件でした。電話相談者の性別は、女性が92%、男性が8%。圧倒的に女性が多い状況です。
具体的な相談内容は、まず男性は、自分のこと81%、親のこと9.5%、妻のこと9.5%。一方女性は、自分のこと41%、残りのおよそ6割は家族のことです。女性は自分のことだけではなく、家族の問題も解決しようと努力していることがわかります。
親に関する相談で、母親についてのものには「元気がなく家に引きこもりがちになった」と母親のうつ病を心配したものや、「一人暮らしの母親が電話で急に人の悪口を言うようになった」など精神疾患や認知症の早期発見のきっかけになるものもあります。女性が、母親をとてもこまやかに見ていることに驚かされます。
またご自分のことでは、人間関係が一番多いですね。夫やしゅうとめ、職場、また不倫の相談などもあります。なかにはうつ病で通院中という方もおられますが、「話して楽になりました」と、いわゆるストレス対処として電話を上手に使っていただいています。
子どものことについては、「薬物やアルコールがやめられないようだ」「何カ月も引きこもっている」など依存症やひきこもりの相談がしばしばあります。父親についての相談で最も多いのはアルコール依存症についてでしょうか。ずっと他人に相談できなかった母親に代わって、娘が気づいて相談してくるケースが多いようです。
女性は相談窓口を上手に活用していますが、もちろんすぐには片付かない問題もあります。その代表的なものが依存症です。
人はストレスがかかった時に、心や体にいろんな影響が出てきます。うつ病や抑うつ状態、不安神経症などメンタル面に出てくるもの。または胃潰瘍(かいよう)やぜんそく、円形脱毛症などの心身症。それともう一つが依存症なんです。お酒やギャンブル、薬物などに依存してしまい、結果的に多重債務に陥ってしまう場合もあります。
依存症の方は、はたから見れば自分勝手に見えるかもしれませんが、ところが本人にとっては心の痛みの自己治療なんです。依存症には、アルコールなど気分を変えてくれる物質へのめり込む「物質依存」、ショッピングやギャンブルなど高揚感を与えてくれる行動プロセスへのめり込む「プロセス依存」、自分が他人のために奔走したり相手を思い通りに行動させようとする「人間関係依存(共依存)」などがあります。
依存症に立ち向かうには、強くなるより賢くなることや、「干渉しない」「しからない」「後始末をしない」など家族の協力が必要。女性はこまやかでよく気が付く方が多いんですが、ともすると相手を変えられると思ってしまうこともある。ところが実際は人は変えられません。変えられるのは自分だけ、という理解と思いやりのある人間関係をつくることが大事です。