肥後医育塾公開セミナー

肥後医育塾公開セミナー
肥後医育塾公開セミナー

平成24年度 第1回公開セミナー「女性のためのメンタルヘルス」

【講師】
医療法人山田会 八代更生病院 副院長
安川 節子

『《講演@》若い女性の不安と気分変動』
圧倒的に多いパニック障害


   精神科に対して、みなさんはどんな印象をお持ちでしょうか。一般的に精神科の治療は、内科や小児科と同じで、薬物療法と心理社会的療法を上手にミックスしながら、そして保険診療の範囲内で行っています。私は普通の民間病院に勤めていますが、医師1人では患者のサポートが十分にできませんので、看護師や作業療法士、心理士とチームを組んで日々の治療にあたっています。目立ちませんが、熊本県内には、わたしのほか50人近い女性の精神科医もおります。
 精神科ではいろんな精神障害を診ています。特に民間病院では、アルコール依存症や統合失調症、うつ病・そううつ病などの気分障害、不安障害、摂食障害、場合によっては人格障害、発達障害などの治療を行っています。
 そのなかで不安障害の方はかなりの割合を占めます。不安障害には、パニック障害、社交不安障害、強迫性障害、全般性不安障害、ストレス関連障害、恐怖症などさまざまな症状がありますが、その中で圧倒的に多いのはやはりパニック障害です。
 パニック障害の例としては、電車や人込みなど特定の状況下での突然の動悸(どうき)、発汗、息苦しさ、震え、めまいなどが挙げられます。「わたしは気が弱いのかしら」とか「気が小さいのかな」など性格に悩む女性も多いのですが、実際は乳酸ソーダ(保湿のため化粧品やシャンプーに添加されることもある)の吸入でも発作が誘発されることも。パニック発作になりやすい方は、「不安をいち早く察知できる」とも言えますので、そんな方には「それはあなたの体質なので、そう深刻に悩まずに、まずはパニック発作を治しましょう」ということから治療に入ります。
 いろんな不安障害がありますが、不安障害はうつ病と合併していることが少なくありません。うつ病もしくは不安障害と診断された方の30%に、実際は双極性障害の可能性があるという研究報告もあります。
 女性は、恋愛や結婚、育児など社会的性別役割の違い、産後や更年期など生物学特性、気遣いが上手な同調性性格などが影響するせいか、気分変動や不安に関しても性差があります。
 治療には薬物療法を行います。安定剤と呼ばれる抗不安薬はよく用いますが、うつ病にも用いられる脳内のセロトニンを増やすSSRIと呼ばれる抗うつ薬も効果的です。
 では日常生活のなかでセロトニンを増やすにはどうしたらいいか、わかっていることがあります。まず朝、太陽の光を浴びる。それとリズム運動。この2つが大事です。太陽の下、リズミカルな呼吸ができるような運動を30分続けると、セロトニンが増えるそうです。
 女性は確かに気分変動があって不安に弱くて大変なんですが、それを乗り越える力も持っています。日本の自殺者数は、男性に比べると女性は半分くらいですので、そういう意味では不安やうつと付き合いながら、女性の方が長生きしてやっていけるのではないでしょうか。