【講師】 |
『《在宅医療を支える専門職からの報告と提言》C熊本都市圏の緩和ケア事情 〜在宅医の立場から〜』
在宅療養選択も可能に
熊本都市圏には、がんの診療を受けられる大きな基幹病院(がん診療連携拠点病院)が7カ所あります。緩和ケア病棟は、熊本市内に5カ所・94床あり、人口当たりの全国平均の約4倍に上ります。さらに、熊本市には、24時間体制で必要なときに往診や訪問看護を行う在宅療養支援診療所は、85カ所あります。
がんの患者さんは、がん診療連携拠点病院と一般病院、緩和ケア病棟の間を行き来されているケースが多いようです。こうした中、患者さんが、住み慣れた自宅で安心して療養できるように支援する在宅医療の体制づくりが望まれています。
在宅医療の普及のためには、在宅療養支援診療所や訪問看護ステーション、ケアマネジャーが担当する居宅介護支援事業所、ヘルパーがいる訪問介護事業所、保険調剤薬局などの役割が、今後ますます大きくなってくると思われます。例えば、外来に通院中のがんの患者さんが、その後状態が悪くなって入院され、退院するとします。昼間も床に就くことがある体調の場合、24時間オンコール体制の在宅療養支援診療所と接点を持つことが望ましいでしょう。
医師や看護師の訪問回数は、病状によりますが、在宅医療の併用により体調を維持し、基幹病院の外来通院を継続する患者さんもいます。併用中に病状が重くなったとき、緩和ケア病棟に入院する、もしくは自宅で最期まで過ごされるなど、希望によって選択すればよいと思います。
がんの患者さんと、ご家族を支える在り方として、熊本都市圏では基幹病院は整っており、緩和ケア病棟の数も十分に足りています。これからは、患者さんとご家族が、在宅療養支援診療所をいかに有効利用するかが、より良い緩和ケアに向けた課題になってくるのではないでしょうか。