肥後医育塾公開セミナー

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平成23年度 第1回公開セミナー「在宅医療を考える 〜自宅で安心して過ごすために〜」

【講師】
共愛歯科医院訪問診療科科長
園田 隆紹

『《在宅医療を支える専門職からの報告と提言》B安心してお口から食事をしていただくために〜訪問歯科診療で行う嚥下内視鏡を用いた在宅での食支援の取り組み〜』
誤嚥(ごえん)性肺炎にも要注意


   私は、自宅や病院、老人ホームなどへの訪問歯科診療を行っています。高齢者の食事でまず気を付けたいのが窒息。近年、増加傾向にあり、窒息による死者は交通事故の死者数より多いというのは有名な話です。流動食でも窒息することがありますから、飲み込む力や、かむ力が衰えた高齢者の食事には細心の注意が必要です。
 口を動かし、よくかんで食べることは窒息を防ぐためにも、体の健康にもとても大切。食べることで口内の汚れを洗い流し、また口をよく動かすとおなかの働きもよくなり、栄養吸収の効率が高まるといいます。おなかには体内の5〜6割の免疫組織があるとされ、おなかがよく動くと体の抵抗力が維持されるともいわれています。
 高齢者は食べ物が気管に入ることで起きる誤嚥(ごえん)性肺炎にも注意しなければいけません。食べ物を正常に飲み込むときは、喉の弁が反射的に気管の入り口にふたをして、食べ物を食道の方に流しますが、年を取ると機能が鈍り、誤って気管に入りやすくなります。嚥下(えんげ)内視鏡検査で食事中の喉の動きを調べるとよく分かります。内視鏡は持ち運びが可能で、自宅でも検査を行うことができます。
 これまでの嚥下障害はリハビリをして治すという考えが一般的でした。しかし、介護を必要とする高齢者に対しては今の力で何とか食べられるような環境の整備(食支援)が大切だと考えます。例えば、食べ物が気管に入りにくい姿勢を取らせる、一口の量が多くならないように小さなスプーンを使う、ゆっくりとした食事のペースを守る―などといった配慮が必要です。
 口から食べるという人間の機能をあきらめず、命の最期まで使えるようにサポートすることが今は求められています。