【講師】 |
『《講演6》がんの薬物療法』
「分子標的治療薬」に注目
化学療法は全身的ながん治療に用いられ、集学的治療の中でも特に重要な役割を果たしています。手術ができない進行がんに対し、抗がん剤やホルモン剤などを投与する「化学療法」、手術後の再発を予防するための「術後補助化学療法」、大きながんを化学療法で小さくした後に切除する「術前補助化学療法」などさまざまなものがあります。
抗がん剤には多くの種類があります。消化器のがんに多用されている代謝拮抗(きっこう)剤は、がん細胞に必要な栄養素と逆の作用を持つ成分を取り込ませ、がんを死滅させます。がん細胞の遺伝子に結合し増殖を止めるプラチナ製剤や、植物由来の製剤もあります。
そして最も注目されているのが「分子標的治療薬」です。これはがん細胞だけを攻撃し、正常細胞にはダメージを与えないとされています。
抗がん剤の投与方法は、静脈からの投与のほか、動脈や胸腔、腹腔、髄腔の中に投与する方法があります。最近は経口薬の登場で、がんの外来治療も行いやすくなりました。ただ経口抗がん剤は一般の薬剤と違って、服用の仕方や保管方法を誤ると重い副作用が出てしまうことがあるので、注意が必要です。
抗がん剤の多くは正常な細胞も損傷させてしまう作用があるため、副作用の問題がついて回ります。傷が治りにくい、口内炎、下痢や便秘、脱毛、爪の異常などの症状が挙げられますが、最も苦痛なのは嘔吐(おうと)や吐き気です。しかし最近は新しい制吐剤が開発され、以前より悩みが改善されてきました。
化学療法は、基本的に臓器の機能が保たれ、全身状態の良い人に行われます。その上で、インフォームドコンセント(十分な説明と同意)がなされていることが前提となります。そして、化学療法を行う際には、副作用や痛みを緩和する薬物療法(支持療法)を併用する必要があります。