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『《講演5》肝がんに対する最新治療2011』
入院期間短い腹腔鏡手術
肝がん(肝細胞がん)は、大きくなってもあまり症状が出ません。そのため大きな危険因子であるC型・B型肝炎、肝硬変に注意する必要があります。飲酒や高齢、男性であることも危険因子となるので気を付けてください。
肝がんの治療法には、肝切除、局所凝固療法、肝動脈塞栓(そくせん)療法などがあります。
肝切除は、肝臓を3分の2以下の範囲で切り取ります。熊大・消化器外科の肝切除症例は年間100例を超え、切除の際の前凝固により、今では肝臓からの出血をかなり抑えられるようになりました。
局所凝固療法は超音波エコーを見ながら、ラジオ波(RFA)を発生する針をがんに刺し、腫瘍細胞を、周囲肝組織を含めて凝固します。
肝動脈塞栓療法は、肝がんに栄養を送る動脈を閉塞(へいそく)させる物質を入れ、腫瘍内に抗がん剤を止まらせる治療法です。腫瘍の数が多くても可能ですが、再発率が高いため年に2、3回は治療を受ける必要があります。
最新の治療法としては、開腹手術よりも傷が少なくて済む腹腔鏡下肝切除術や腹腔鏡下局所凝固療法などがあります。どちらも従来の開腹による肝切除に比べ、入院期間を半分以下に短縮でき、予後はいずれも良好です。
そして最終手段となるのが肝移植です。「ミラノ基準」(5センチ以下の腫瘍が1個、または3センチ以下の腫瘍が3個以下)と呼ばれる条件を満たせば、手術に保険が適用されます。熊大病院では昨年、肝移植が300例を超え、うち43例が肝がん患者への移植でした。つい先日は、脳死肝移植も2例ありました。
最近は、治療効果が期待できる新薬も多数開発されています。これまで手術できなかった患者さんも、化学療法や放射線療法などを組み合わせた集学的治療の導入で、最終的に手術が可能となり、長期の生存が期待されます。