肥後医育塾公開セミナー

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平成22年度 第3回公開セミナー「消化器のがんについて知ろう」

【講師】
熊本中央病院外科部長
那須 二郎

『《講演3》増えている大腸がん』
生活・食習慣に注意必要


   大腸がんの患者数は年々増え続けており、2005年には約10万5千人が発症、09年には約4万3千人が亡くなっています。予防には生活・食習慣への注意が必要で、適度な運動や、禁煙などを心掛けてください。
 大腸がんは、ほかのがんに比べると、治りやすい病気です。検診により早期発見されれば、さらに治る可能性が高まります。
 大腸がん検診は40歳以上の方すべてが対象で、便潜血検査と問診が行われます。もし1次検査の結果が陽性となった場合には必ず精密検査を受けてください。
 大腸がんの症状は、便に血が混じる、便が細くなる、便が残っているようですっきりしない、下痢と便秘を繰り返す―などです。そうした症状がある場合は、胃腸科や消化器科、外科肛門科などを早めに受診し、精密検査を受けてください。
 親子・兄弟に大腸がんの患者さんがいる方、慢性的な腸の炎症がある方も注意が必要です。そうした方は症状がなくても、40歳になったら精密検査を受けた方がよいでしょう。精密検査は大腸内視鏡検査が一般的ですが、20分ほどで終了し、ほとんど苦痛はありません。
 大腸がんの治療は早期の場合、患者さんへの負担が軽い内視鏡治療が可能です。がんが進行すると手術が必要ですが、最近では腹腔鏡手術が導入されています。これは開腹手術に比べて傷が小さく、手術後の痛みが軽い上、傷が癒着しにくいなどの利点があります。実施率は全国平均で30%程度ですが、熊本中央病院では80%近くの方に行っています。
 直腸がん手術においては可能な限り肛門を残す手術を当院では取り入れています。ただ、肛門近くの手術には経験や知識、技量が求められますので、大腸がん専門医への相談をお薦めします。