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『《講演1》食道がんって何?』
リンパ節転移が特徴
食道がんは60歳代をピークに、圧倒的に男性に多く見つかっています。これには遺伝や環境因子が影響しているようで、最も関連性が大きいのが喫煙と飲酒です。飲酒には体質が関係し、特にお酒を飲んで顔が赤くなる人はがんの発生率が飛躍的に上がるため注意が必要です。
食道がんは粘膜下層までにとどまるT1、深く浸潤して筋肉層に入るT2、食道の外膜までがんが達するT3、周りの心臓、大動脈、気管支、肺など大事な臓器に転移するT4に分けられます。T1では自覚症状がありませんが、既に約10%の割合でリンパ節への転移が見られます。T2になると自覚症状が現れ、かなりのリンパ節転移が見られるのが食道がんの特徴です。そのため予防と早期発見が重要になってきます。
早期発見のためにはバリウム検査より、内視鏡検査の方が有効です。発見率はバリウムだとT1が10%、T2が18%。一方、内視鏡ではT1が86%、T2が74%と大きな差があります。内視鏡検診は進歩しており、ルゴールという色素で病変を判別する色素内視鏡、特殊なフィルターにより判別できる狭帯域観察(NBI)、超音波内視鏡などがあります。現在の日本では、内視鏡を使った世界最高水準の検査を安価に受けることができるのです。
食道がんの治療は進行度に応じ、内視鏡切除や手術、化学療法、放射線療法などを選択します。早期なら患者さんへの負担が少ない内視鏡切除が可能ですが、リンパ節の切除を要する場合は大手術になってしまうため、手術による死亡率が高まります。ただ、食道がん手術に慣れたチームがいる施設では、手術経験の少ない施設より死亡率が低いというデータもありますので、ぜひ専門医療機関での手術を推奨します。