肥後医育塾公開セミナー

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平成19年度 第3回公開セミナー「関節リウマチを考える」

【講師】
熊本大学医学部付属病院整形外科講師
中村 英一

『『関節リウマチの手術について』』
生活の質改善に期待も 自ら納得の上決断して


   関節リウマチは全身的な病気です。治療は基礎療法、薬物療法、手術療法、リハビリの4本柱から成り立っています。治療の基本はあくまで、病気・病状について正しい知識と理解を持ち、全身のコンディションを保つなどの基礎療法を土台として、薬物療法が主体です。その上で、薬物療法やリハビリでは病状の改善が難しく、約半年以上、頑固な痛みや腫れが続いており、手術を受けることで、社会生活、日常生活での「生活の質」を改善できる場合に手術療法が勧められます。

 手術となると、受ける側としてはメリット・デメリットを冷静に考え、患者さん自身で決断することが何より大切です。

 手術療法は「滑膜切除術」と「機能再建術」に大別されます。滑膜切除術は関節破壊の進行を防ぐため早期に行われる処置で、また機能再建術には人工関節置換術、切除関節形成術、関節固定術、脊椎(せきつい)固定術があります。

 関節リウマチでは、滑膜の炎症を抑えない限り、腫れや痛みをなくすことはできません。また、滑膜の炎症症状が増悪すれば、関節が徐々に破壊されていきます。

 そこで、早い時期に炎症を起こしている滑膜を切除して骨・軟骨の破壊の進行を抑えようというのが滑膜切除術の大きな目的です。手術する個所は手の指、手首、ひじ、肩、ひざなどですが、ひざ以外の関節に対しては、関節を直接切り開いて滑膜を取り除く方法が多く用いられ、一方、ひざ関節では内視鏡で関節内部を見ながら滑膜を切除する方法が取られます。

 人工関節置換術は、関節の表面を金属インプラントで置換する手術です。下肢関節ではひざや股関節に効果があり、多くの患者さんに「活動範囲が大きく広がった」と喜ばれています。材質も、最近では軽量で耐久性に優れたチタン合金などが使われるようになり、この機能再建の分野における進歩は目覚ましいものがあります。

 そのほか、変形した足の趾(し)骨を削って痛みを取り除く「切除関節形成術」があります。足関節に対しては、安定した人工関節が現段階では開発されていないため、関節を動かないようにする関節固定術が一般的には行われます。

 頸(けい)椎の関節にも炎症が起こることがあります。炎症によって頸椎に亜脱臼や脱臼が起こると、首の後ろや後頭部が痛くなり、さらに脊髄(せきずい)が圧迫されると、しびれや手足のまひなどが起こります。放置すれば呼吸まひなど生命にかかわることもあります。首のレントゲンを撮ると、頸椎にある7つの骨のうち1番目の骨「環椎」と2番目の骨「軸椎」がずれる環軸椎亜脱臼が見られ、痛みやしびれなどの症状がある場合には、「頸椎固定術」が行われます。特に、経験と技術が求められる手術です。

 手術にあたっては、疑問があれば遠慮なく医師に質問し、自分の希望もはっきり伝えましょう。納得した上で手術に臨むことが重要といえます。

 手術を決めるポイントとして、(1)手術によってどの程度の改善を期待できるか(2)手術の成功率と手術後の経過はどうなるか(3)リハビリの内容とかかる時間(4)手術後の生活でどのような注意が必要か(5)手術を受けない場合はどうなるか―などが挙げられます。