肥後医育塾公開セミナー

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平成19年度 第2回公開セミナー「食生活とアレルギー」

【講師】
国立成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部部長
斎藤 博久

『『アレルギー予防のためにした方がよいこと、しなくてもよいこと』』
“清潔な環境”悪影響も 効果大きい「ダニ退治」


   「小さいころに清潔な環境で育つと、後々アレルギーになりやすい」という話を聞いたことがありませんか。日本人の3人に1人にアレルギー性疾患があるといわれていますが、大規模な疫学調査によると、子どもの時、細菌の一種・エンドトキシンが大量に存在するような環境で育った人ほどアレルギーになりにくく、その年齢が若いほど効果が高いと報告されています。成人するとその効果はまったくなくなります。

 エンドトキシンは、私たちの身の回りに数多く存在し、大気中の量を比べると、例えば、牛や馬を飼っている農家は東京などの都会の100倍ほどもあります。疫学調査では、将来、花粉症などを発症する確率は、幼少期、牛や馬がそばにいるような環境で過ごした人に比べ、都会で育った人の方が5倍高いという結果が出ています。

 最近30年間くらいの室内環境を調べるとエンドトキシンは減ったのですが、ダニは増えています。ダニはアレルギーをもたらす大きな要素の一つで、ぜんそくを引き起こす要因にもなっています。通常、布団やじゅうたんなどに1万匹ほどいます。気温が高い夏場に最も繁殖し、気候が涼しくなる秋には死んでしまいますが、この死がいやふんがアレルギーを誘発します。死がいは非常に軽いため、人が寝返りを打つたびに空中に舞い上がり、それを口や鼻から吸って、アレルギーを起こしてしまうのです。そのため、秋になると日本人の若者の7―8割がダニアレルギーに悩まされています。

 ぜんそくの最も効果的な予防は、ダニ退治をすること。ダニが保有するアレルギー誘発物質・アレルゲンは酵素作用が非常に強く、気管支粘膜のバリアを破壊してしまう作用があるためです。

 ダニを減らすには、布団やじゅうたんに毎日、掃除機をかけると効果的だといわれます。あるアレルギー専門医によると最低週2回、布団に丁寧に掃除機をかければ、ダニの量が2マイクログラム以下になり、ダニアレルギーの人が一人もいないといわれるスウェーデンやノルウェーと同レベルになるそうです。これらを実践することで、ぜんそく発作を起こす確率もぐんと下がります。

 もう少し楽な方法がないかと考案されたのが布団カバーです。ダニ防止用のため織り目がとても細かく、ダニが通過できないようになっています。私たちの調査でも、かなりの確率でダニアレルギーを防ぐことができました。環境整備はぜんそくの予防だけでなく、治療にも有効ですので、ぜひ実践してください。