肥後医育塾公開セミナー

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平成19年度 第1回公開セミナー「病気と免疫」

【講師】
熊本大学大学院医学薬学研究部頭頸部感覚病態学分野講師
鮫島 靖浩

『『鼻アレルギー、花粉症とのつきあい方』』
治すよりコントロール まずは抗原を明らかに


   鼻アレルギー(アレルギー性鼻炎)は、鼻の粘膜上の?型アレルギー性疾患で、発作性反復性のくしゃみと水性鼻汁、鼻閉(鼻づまり)を主な症状とします。一方、花粉症は鼻アレルギーの中で、原因が花粉によるものです。?型アレルギーは、アレルギーの原因となるダニや花粉などの抗原(原因物質)に対し、体内でIgEという抗体が作られ、この抗体が抗原と結び付くことで発症します。

 鼻アレルギーの有病率は高く、通年性の鼻アレルギーは日本の総人口の18%程度と、五人に一人の確率。花粉症もそれに近い数値です。ハウスダスト(室内のほこり)などによる通年性のアレルギー性鼻炎は若い人に多く見られるのに対し、花粉症は三十―四十歳代がピーク。しかし、最近は花粉症も低年齢化が進んでいます。

 病気を起こす抗原は、通年性の症状を起こすダニやペット、そして季節性の症状をもたらす花粉です。ダニはハウスダストの中にいるチリダニという種類で、その死骸(しがい)や排せつ物のタンパクが原因になります。花粉はスギが最も多く、日本では二―三月に大量に飛散。五―六月には、イネ科のカモガヤの花粉も多く飛びます。

 鼻アレルギーは治りにくい病気です。そのため、治すというよりコントロールすることが大切です。症状はないか、あっても軽い程度で日常生活に支障がない、できれば薬も必要ない程度の状態に維持できれば成功です。

 治療の第一歩は、まず抗原を明らかにすること。そして、主治医と、抗原除去や、その対策をよく話し合ってください。通年性のアレルギーの人は、室内の丁寧な掃除で、ほこりがたまりにくい環境を整えることが重要。ペットも抗原の一つです。花粉症の場合は、飛散情報に注意し、飛散が多い日は外出を避け、マスクや眼鏡を着用するなどの対策に努めましょう。

 薬物療法は、最も多く用いられる治療法ですが、症状に応じ、抗ヒスタミン薬や局所ステロイド薬を使います。鼻閉や薬の副作用が強い人、薬が効きにくい人は、手術も一つの選択肢です。鼻閉改善や鼻汁を減らす手術のほか、レーザーでアレルギー反応の場を減らす手術なども行われています。

 ほかに、特異的免疫療法(減感作療法)があります。治療に年数を要し、まれに副作用の危険性も伴いますが、根治に近い状態が期待できます。

 治療法は、症状の程度、症状がくしゃみ・鼻水が主なのか、鼻閉が主なのかを加味して決めていくことが重要です。花粉症の場合、薬物を使う時期や症状に応じて、初期療法、導入療法、維持療法の三種類がありますが、飛散前から治療を始める初期療法が、最も高い効果が期待できるといわれます。