肥後医育塾公開セミナー

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平成18年度 第2回公開セミナー「水と体の環境」

【講師】
肥後の水資源愛護基金理事長・肥後銀行常任顧問
長野 吉彰

『「夜間摂水の効能」』
熊本の水道水で健康に


   肥後の水資源愛護事業を始めて今年で二十周年を迎えます。この活動を始めた動機は今から四十五年前、東京支店の支店長代理として上京、たまたま「櫂(かい)の滴(しずく)も玉と散る」のイメージにはほど遠い隅田川の超汚濁と悪臭に驚愕、当時の重化学工業中心の高度成長は美しい日本列島を公害列島化するのでは? と憂いました。五年後、今度は支店長として長崎に赴任。昭和四十二年の長崎大渇水に遭いました。最悪時には二日に一回、三時間給水という惨状。その上、蛇口から出てくる水は薄い黄緑色を帯びていました。水前寺や上江津湖、八景水谷など熊本のきれいな湧水が夢に出てきて、蛇口からおいしい水がザーッと出てくる郷土が懐かしくてたまりませんでした。

 このような相次ぐ体験から、肥後銀行の頭取時代に肥後の水資源愛護賞を「ふるさとの質・量共に日本一の財産である地下水を汚染と枯渇から守ろう」との思いのもとに発足しました。これまで熊本市・菊池川流域同盟、本田技研工業?など県内の二百二十二団体、十一個人を顕彰。さらに水資源愛護に関わるイベントの開催や各種のマスメディアを通じて貴重な水資源愛護の啓発活動に努めてきました。

 熊本市の上水道が100%地下水で、質・量共に日本一であることは知られていますが、本日のテーマである健康医療という視点からの認識は薄いのではないでしょうか。あるとき、私は主治医から「高齢に達したら、特に夜間に水の摂取を増やした方が良い」とアドバイスを受けました。夜間に水をたっぷり摂れば、脱水症状の予防や老廃物の排出を促すことにもなり、血液さらさらにもつながるそうです。一日に必要な水は体重一?当たり約三十??が目安だそうです。七十?の私の場合、約二?強になります。昼間に仕事をしながらこれだけの量をとるのはなかなか大変なので、私は入浴後や寝る前など夜間の水の摂取を心がけています。これを続けたおかげか人間ドックでの血液検査は異常なくらい正常です。市販のミネラルウオーターは熊本市の水道水と比べ価格はほぼ七百倍くらいです。その熊本の水道水は厚生労働省の「おいしい水研究会」の検査では全国でベスト3に入っており、水の摂取は水道水で十分です。これは熊本市民にとって日本一の天の恵みであります。このおいしい水は熊本の農産物もはぐくんでおり、また優良企業誘致の迎え水にもなるなど、地下水の恩恵は計りしれません。

 二十年ほど前まで熊本市民が使用する一日あたりの上水道使用量は福岡市民と比較して六十?も多い浪費ぶりでした。愛護賞事業の啓発活動も貢献したのか市民の節水意識も高まり、今では四十?弱まで改善を見ております。みなでさらに努力して、この素晴らしい熊本都市圏の地下水を永久に守りたいものです。