肥後医育塾公開セミナー

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平成17年度 第3回公開セミナー「小児生活習慣病を防ぐには」

【講師】
熊本大学医学部付属病院医師
木脇 弘二

『「地域の小児生活習慣病検診から」』
過剰な間食を控え基本の3食大切に


   熊本市では小学四年生を対象に小児生活習慣病予防検診が実施されています。学校の身体測定で肥満と判定されたお子さん(肥満度20%以上)に通知が出され、希望者が熊本市医師会ヘルスケアセンターで診察と指導、血液検査を受けています。年一回の実施です。「異常なし」「要指導」「要精査・加療」の判定を受け、要精査・加療のお子さんには熊大小児科などへの受診をお願いしています。

 今年度は小学四年生全体六千五百六十一人のうち五百九十二人(9・0%)が肥満であり、このうち二百四十六人(対象者の41・6%)がセンターを訪れました。この十年間で三千四百四十八人を検診しており、その結果のまとめをお話しします。

 生活習慣病の危険因子と肥満度の関係では、男女とも悪玉コレステロール値と中性脂肪値は肥満度が高いほど高く、善玉コレステロール値は肥満度が高いほど低いという結果でした。ALT(肝機能障害の指標)の数値からは肥満度が高いほど肝機能の異常が出やすいということが分かります。特に高度肥満の男子は平均値が異常値となっており、脂肪肝のお子さんが多いと考えられます。

  肥満度50%以上の高度肥満者は男子で多く、二〇〇〇年までは三十人前後でしたが、二〇〇一年以降四十人近くとなり、二〇〇四年に五十人ほどに増えています。悪玉コレステロール値が高いお子さんは二〇〇〇年から急に増え、二〇〇四年は男女合わせて四十人ほどです。肝機能の異常は明らかに男子に多く、二〇〇〇年以降増加傾向がみられます。

 肥満に関係することの多い2型糖尿病は子どもでも増加、熊大で診療している中では、大体十―十二歳以降に発見されています。必ずしも肥満度の高いお子さんに多いということはなく、軽度の肥満のお子さんにも見られています。

 センターでの検診で要精査・加療と判定されたお子さんが熊大小児科に受診するまで一カ月半ほどの期間があり、すでにその間に肥満度が低下する傾向があります。体重はほぼ横ばいですが、身長が伸びるために、減量をしなくても肥満度としては改善するわけです。検診による効果と思われます。

 この肥満度の低下は1%に満たないのですが、高脂血症や肝機能の検査値には改善がみられます。熊大受診時すでに、総コレステロール値、悪玉コレステロール値、ALT値はいずれも低下し、目標値近くまで改善されていました。

さらに初診から夏休みまでの約八カ月間経過の追えたお子さんでは肥満度、HOMA―R(インスリン抵抗性の指標)、総コレステロール値、悪玉コレステロール値、ALT値のいずれも引き続き改善傾向が続いていました。
 つまり、それまでの体重の増加速度をゆっくりにし維持できれば、子どもの肥満による生活習慣病リスクは改善すると言えます。

 「食べる楽しみ」を大切に、基本の三食と必要な間食は大事にして、余分なところ、例えば水代わりの清涼飲料水、ファストフードの過剰な摂取、給食の毎回のお代わり、牛乳の過剰摂取など、具体的にポイントを挙げゆっくり取り組むことがコツです。お子さんの肥満に対応する場合、非常にデリケートな面があり、内容によって,一人一人対応する場合と、みんなで取り組む機会とを上手に分けて行うことが必要です。