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『「糖尿病はなぜおきる?」』
遺伝と環境因子が起因に
糖尿病の研究は進んでいますが、残念なことに患者は増え続けています。平成十四年のデータによると、日本では糖尿病が強く疑われる人が七百四十万人、可能性を否定できない人が八百八十万人、合計千六百二十万人が糖代謝機能に何らかの異常があるといわれています。これは人口の六、七人に一人の割合に上り、しかもどんどん増え続けているのが現状。糖尿病患者を減らすことは日本の医療にとって緊急の課題です。
さまざまな合併症
血糖値とは血液中のブドウ糖濃度で、正常値は六十から百九mg/dlです。糖尿病でない人では、体内で血糖値を下げるためのホルモン、インスリンがすい臓から出て、うまくブドウ糖を筋肉や脂肪に蓄えます。しかし糖尿病になると、インスリンの分泌やブドウ糖を吸収する作用が低下し、いつまでも血糖値が高い状態が続くのです。
糖尿病は早めに治療すれば心配ないのですが、きちんと治療しないとさまざまな合併症を引き起こします。実際、日本では糖尿病が原因で毎年約三千人が失明しており、日本における後天性失明の原因の第一位となっています。
腎臓の機能が低下すると尿毒症になります。昔は亡くなる人もいましたが、現在は人工透析でいったん血を体外に出してきれいにして体内に戻すことで、日常生活を続けることができるようになりました。しかし、生活の質は著しく低下します。二〇〇二年のデータによると、毎年約三万人が新たに人工透析を始めています。糖尿病患者は一九八〇年から右肩上がりで増えており、同じ曲線を描きながら人工透析患者も増加。そのほとんどが糖尿病による腎臓障害とみられます。
糖尿病で閉塞性動脈硬化症を引き起こして血液の流れが悪くなり壊疽(えそ)になってしまったり、脳や心臓の血管障害で脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞も引き起こします。糖尿病になると、このような血管の病気も二倍から三倍起こしやすくなります。合併症が一つだけでなく合わせて起こってくるのが糖尿病の怖いところなのです。
生活習慣に配慮を
糖尿病には、1型、2型、その他の特定の機序(仕組み)や疾患によるもの、妊娠糖尿病の四つに分かれます。1型はすい臓のインスリンを分泌する細胞が壊れてしまい外からインスリンを打たなければならない重篤なもので、十万人に一人から二人の発症率で非常に頻度は少ないです。2型は日本人の糖尿病の90%以上を占め、インスリンの分泌や作用の障害で起こってくるものです。遺伝的な背景と生活習慣などの環境因子が関係して起こると言われています。
糖尿病になりやすい人は、一つは家族に糖尿病患者がいる人で、糖尿病になりやすい体質を受け継いでいる可能性があります。もう一つは環境因子でリスクの高い人です。不規則な生活習慣、肥満気味、運動不足に陥りがちな生活、動物性脂肪をたくさんとるような食生活の人は要注意。2型糖尿病の増加は、これらの環境因子が深くかかわっていると考えられます。
糖尿病の予防、あるいは?糖尿病予備軍?といえる境界型の人に心掛けてもらいたいのは、栄養バランスが良く適性なエネルギー量を摂取する食事です。加えて脈を測って一分間に百―百二十くらいの運動を日常的に行うことも心掛けてください。
もしも糖尿病になっても、きちんと血糖値をコントロールすれば合併症の予防や発症を遅らせることができます。治療が必要な方は病院に行って主治医と相談してください。症状に合わせて適切な薬の服用を行うとともに、定期的に経過をチェックすることが欠かせません。