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『「動脈硬化はなぜ起こるか?その予防」』
食べ過ぎや喫煙… 危険性増す原因に
動脈硬化は血管の内壁が高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病により傷つき、コレステロールが取り込まれ、動脈の内腔(くう)が狭くなった状態のことです。生活習慣病がなくても動脈硬化になりますが、生活習慣病があるとより進行してしまうのです。
生活習慣病は食べ過ぎや偏食、喫煙、運動不足、ストレス、過度の飲酒など体に負担のかかる生活習慣を続けることによって引き起こされる病気の総称で、以前は成人病と呼んでいました。悪性腫瘍、脳卒中、肝臓病、腎臓病、骨粗しょう症も生活習慣病に含まれます。
血液中の脂質が多くなるのが高脂血症です。脂質が多くなると、動脈疾患を引き起こしやすくなります。食事療法や運動療法による治療が行われ、肥満があれば減量し、それでも治らなければ薬剤治療が行われます。
糖尿病は血糖を下げるインスリンの作用が弱くなることにより高血糖の状態が続く疾患です。日本では現在、年間30万人ずつ患者が増えています。糖尿病によりさまざまな血管の障害が生じます。糖尿病の治療は病気の進行度の目安となるヘモグロビン血糖値を6%台に保つことが目標となります。それにより合併症が阻止でき、普通の社会生活が送れます。食事療法と運動療法が中心になり、必要に応じて薬物療法が行われます。
高血圧になると脳、心臓、腎臓、血管、眼底などに影響が出ます。血圧が高いほど心臓病になりやすいというデータもあります。高血圧を治すには塩分を抑え、野菜や果物を多く取り、適正な体重の維持、運動、アルコールの制限、禁煙などが必要になります。これでも血圧が下がらなければ薬による治療が行われます。
肥満は最近増えています。肥満になると、血液中の脂肪が過多になりやすく、さらに高血圧、高尿酸血症や糖尿病になりやすくなります。肥満も食事と運動療法により治療されます。ただ食事療法では絶食は避けてください。絶食すると脂肪が落ちずに筋肉が落ちることになり、かえって悪くなるからです。
こうした生活習慣病がある人は、ない人より心臓や血管の病気になる危険性が増すといわれ、一つあると五倍なりやすく、二つで十倍以上、三つ以上だと三十三倍にもなるというデータもあります。
ことし四月、メタボリックシンドロームという新しい指標がつくられました。それではウエストサイズが男性で八十五センチ以上、女性が九十センチ以上の人は、コレステロール値や血圧、空腹時血糖に、二つ以上の異常があると動脈硬化になりやすいとされています。
喫煙は病気ではありませんが、これも心臓や血管の病気を引き起こす原因になります。生活習慣病があるとさらに危険性が高まります。
生活習慣を是正し食生活を改善すれば動脈硬化のリスクは減ります。普段からの心がけが肝心です。