肥後医育塾公開セミナー

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平成15年度 第3回公開セミナー「体力維持と健康法」

【講師】
有明成仁病院リハビリーテーション部長
牛島 俊昌

『「ねたきりにならない体操の応用」』
筋力を強化して自立促す


   菊水町と天水町を除く二市六町の玉名郡市で体力アップ体操を実施しています。
 最近の高齢者は運動不足で下半身の筋力低下が顕著に見られ、さらにお年寄りに特有の前かがみの姿勢で小刻みに歩行する人が増えています。そうしたことが閉じこもりや、さまざまな病気を誘発する原因にもなります。体力アップ体操を実施すると、八十五歳以上の人でもこうした状態から抜け出せる人もいます。

 体力アップ体操は十二種類のプログラムを用意しています。畳や布団に横になって行う運動が九種類、立って行う運動が三種類あります。この運動によって腹部、臀(でん)部、足の筋肉が鍛えられます。それを三、四カ月で習得するのが目標です。それをマスターすると、主に上半身を強化する次の段階に進みます。これは立って行う七種類のプログラムで構成されています。ここまで習得すると、ほとんどの日常の生活動作が無理なく行えるようになります。

 体力アップ体操によりできる運動能力がアップした例を紹介しましょう。Sさんは体力アップ体操をする前は、室内では伝い歩き、屋外ではつえをついて歩いていました。リハビリのため毎日のように自宅周辺を約十五分間歩いていました。それでも運動能力はなかなか改善しませんでした。体力アップ体操を実施する前の体力測定では、三メートルを歩いて往復する運動で、つえをついて約十八秒かかっていました。

 ところが三カ月間、体力アップ体操を実施したところ、つえをつかずに約十四秒で歩けるようになりました。このほか落下棒テスト、開脚片足立ち、六分間歩行といった体力テストで改善がみられました。

 さらにSさんは体力アップ体操のプログラムが終了したあとも、自宅で記録表をつけながら体操を継続されています。
 そうした結果、立ち上がり動作がスムーズにできるようになったほか、便通もよくなり体調も良好になりました。一時間連続して歩くこともできるようになりました。

 このほか体操参加者のうち九十六人について科学的な統計を取ったところ、さまざまな運動能力で著しい改善効果がありました。
 体力アップ体操の参加者には「五年、十年先を見据えて自分の体力を維持しましょう」とアドバイスしています。そして積極的に活動し、いつまでも健康なお年寄りであってほしいと思います。

 体操のマニュアル本とビデオを制作しており、近日中に県内の市町村に配布予定です。