肥後医育塾公開セミナー

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平成15年度 第3回公開セミナー「体力維持と健康法」

【講師】
熊本機能病院総院長
米満 弘之

『「21世紀のリハビリテーション医療?疾病治療から生活自立支援まで?」』
積極的な社会参加が理想


   リハビリという言葉は一般的になってきて、ほとんどの方が知っておられるようです。ところが、その内容は正しく理解されていないように思います。リハビリテーションという言葉を直訳すると“再び元に帰る"という意味です。西洋では昔から使われ、中世には「宗教破門を解かれる」、十九世紀になると「罪を犯した人が再び社会復帰する」、二十世紀では「病気や障害から解放され人間らしい生き方を取り戻すこと」といった意味で使われてきました。

 人類の歴史は人生の質(QOL
 さて二十一世紀ではどういう方向性が導き出されるのでしょうか。近年、寿命が延び高齢期が非常に長くなりました。この時期を価値あるものにしたいものです。人生の質を高めて、人間らしく生きていくノーマライゼーションの考えが確立されてきました。リハビリテーションはそうした意味を含んで使われるようになってきています。さらに現代の医療とリハビリテーションは切っても切り離せない関係になっています。特にリハビリテーションによって病気や障害から解放されるための医療がリハビリテーション医療です。

 日本では身体、知的、精神の障害からの解放を目指し、社会自立を促すことに力を注いできたものの、高齢化の進展に伴い、寝たきり老人の増加、老人医療費の増大といった問題が出てきました。そのため年金や医療保険、介護保険などを整備し、元気で長生きしてもらうことに重点が移っています。つまり多くのお年寄りが自立した生活を送れることを目指しているのです。そのため寝たきり老人ゼロ作戦などさまざまなプランが立案され、実施されてきたのです。今後は高齢者の生きがいづくりが課題となるでしょう。

 これまでのリハビリテーション医療では障害によって低下した身体機能の回復を図ることで、低下した能力を補う治療を行い、機能低下による社会的不利をなくしていくことを目指してきました。これからのリハビリテーション医療は、人生のすべてにかかわってきます。健康な時は健康増進や病気予防のためのリハビリがあります。そして病気にかかったらそれを治すために、まず急性期の、症状が好転したら回復期の、そして回復した機能を維持するためのリハビリがそれぞれの段階に応じてあるのです。

 それに人の障害に目を向けると同時に、食事動作など、日常生活の中で持っている生活機能を重視するようになってきました。つまり障害による“できない"ことに目を向けるのではなく、“これとこれができる"という活動に目を向けることに変わってきました。その人が持っている生活機能を最大限生かそうということです。

 これからのリハビリテーション医療は保健、医療、福祉の枠組みを取り払い、各分野と地域社会が連携して取り組む必要があるでしょう。そしてより自立レベルの高い生活を目指し、活動的で積極的に社会参加できる人が、二十一世紀におけるお年寄りの理想像と言っていいでしょう。