肥後医育塾公開セミナー

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平成15年度 第2回公開セミナー「加齢にともなう膝の痛み」

【講師】
順天堂大学医学部整形外科教授
黒澤 尚

『「自分で治す運動療法」』
動かすことで痛みが軽減


   変形性膝関節症は、いったんかかってしまったら慢性的に症状が進行し、長い歳月をかけて悪化していく病気です。ですから、早期に発見し適切な治療を始めることがとても重要です。
 病院では膝の痛みやゴリゴリする音、三十分以下の膝のこわばり感、膝の関節が内側に広がっていくレントゲンの所見で比較的簡単に診断ができます。関節は動かさないと正常の新陳代謝が保てません。骨や軟骨や筋肉を動かさないと関節に栄養が行きわたらないので、安静にしていると、かえって症状が悪化。また、その間に骨や筋肉はどんどん委縮し、膝がいっそう弱くなってしまいます。

 膝の痛みを軽くして、日常生活の障害を改善する方法はたくさんあります。その中で私がお勧めしているのが、自宅でできるホームエクササイズです。三種類の筋肉体操を朝晩行い、夜はお風呂に入って温めながらストレッチング。膝に痛みや腫れがあるときは冷やすという手軽なものです。

 まずは三つの筋肉体操から。?足上げ体操(膝を伸ばしたまま、床から十センチほど上げて五秒間数えて下ろす)?横上げ体操(横向きに寝て足を床から十センチほど上げて五秒間数えて下ろす)?ボール体操(サッカーボールやバレーボールをももの間にはさんで五秒間つぶして緩めることを繰り返す)。この三つをそれぞれ二十回ずつ繰り返して一セットです。それを朝晩二回行ってください。膝の痛みを軽減させるだけでなく、徐々に筋肉の力が付き、骨やじん帯も強化、全身の体力向上にもつながってきます。

 また、膝関節症には温めることが効果的で、お風呂は鎮痛効果もあり、お勧めです。十分に温まったら、座って(あれば手すりにつかまって)、痛みなく曲げられるところまで膝をゆっくり曲げて十秒ほどじっとしていてください。

 膝が熱を持っていたり腫れているときは、その後に冷やします。風呂上がりなど、一度温めてから冷やすと効果が上がります。時間はアイスノンや氷のうをラップのようなものにくるんで膝に当て三十分から六十分程度。しびれたり感覚がなくなってきたら一度外して休みます。

 膝関節症に対するホームエクササイズの運動療法の特徴は、?膝関節症の痛みを効果的に軽減させることできる?誰でも自宅で手軽にできる?副作用はまったくなく極めて安全?病院に通う費用と時間が節約できる?効果が実感でき、気持ちが前向きになる?膝以外の体全体にプラスがある(ただし進行した末期の症状ではその効果は四〇%程度)が挙げられるでしょう。

 変形性膝関節症は末期の状態にならない限り、ホームエクササイズによる自己管理で痛みが軽減し、日常生活の障害を軽快させることができます。この方法を二週間続ければ、効果が実感できるでしょう。上手に自己管理をして人生を楽しんでください。