肥後医育塾公開セミナー

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平成15年度 第2回公開セミナー「加齢にともなう膝の痛み」

【講師】
熊本中央病院整形外科医長
阿部 靖之

『「中高年の膝の痛み?変形形膝関節症とは?」』
軟骨がすり減って発症


   日本人の一割、約一千万人が膝の痛みに悩んでいるといわれています。その最も多い原因は変形性膝関節症で、日本では年間約九十万人が発症しています。

 変形性膝関節症とは、膝の軟骨がすり減ることで、衝撃を受け止めるクッションとしての役割と滑らかな動きが悪くなり痛みが出る病気です。初めは動き始めるときに膝が痛む程度ですが、次第に歩くときや階段の上り下り、立ったり座ったりする時に痛みを感じるようになります。膝に水がたまったり、腫れたりすることもあります。さらに進行すると、動くときはいつも痛みを伴うようになります。また、膝の曲げ伸ばしが悪くなったり、膝がグラグラするようになることもあります。

 かかりやすいのは、肥満がある方や高齢者、女性、O脚変形がある方、じん帯を切るなど膝の大きなけがをした方などといわれています。

 膝への負担は、歩くときは体重の三倍、走れば六?十倍以上かかるといわれており、肥満による膝への負担は大変大きいのです。O脚変形では、関節の内側にばかり負担がかかることで軟骨が傷つき、ますます変形が進みます。加齢によって軟骨の細胞の働きが悪くなることが原因の場合もあります。ある調査によると、変形性膝関節症は六十歳代から増えてきて、特に女性は八十歳代の八〇%以上がかかっているという結果が出ています。

 軟骨の成分は七〇%が水分で、二〇%がコラーゲン、残り一〇%がプロテオグリカンという粘性が高い物質で出来ています。網目構造のコラーゲンの中に粘り気のある水分を多く含んだプロテオグリカンがはまりこんでいるような状態です。圧力がかかると水分が放出され、なくなると元に戻るという繰り返しで関節軟骨は骨にかかる衝撃をうまく吸収しています。

 軟骨には血管がありません。栄養は関節液が軟骨に入って初めて運ばれます。つまり関節を動かすことで栄養が行きわたるので、動かさないと栄養不足になり、ますます軟骨が傷んでいきます。異常な負担をかけずに、動かすことが関節にとっては大切なのです。