肥後医育塾公開セミナー

肥後医育塾公開セミナー
肥後医育塾公開セミナー

平成13年度 第1回公開セミナー「子どもの心のケア」

【司会】
臨床心理士・スクールカウンセラー
浦野エイミ

うらの・えいみ 
昭和48年熊本大学教育学部卒。平成7年同大学院教育学研究科修了。現在は県教育委員会スクールカウンセラー、国立菊池病院臨床研究部研究員などを兼任

『互いに認め合う親子関係で』
子どもの心、見えていますか


   体の大きさや機能の発達にプロセスがあるように、子どもの心もいくつもの段階を踏んで成長します。

 「子どもの心が分からない」とよく言われますが、大人の私たちでさえも、自分の気持ちを言葉で表現することは非常に難しいことです。また、日ごろの子どもに対する理想像が強いばかりに、子どもが発信するメッセージやサインに気づかない場合もあります。

 一般的に小学校時代は、親や先生からどう思われているかがとても気になる時期です。だから、学校や友達関係などで大きなストレスを感じても、なかなか正直に相談できないケースも出てきます。しかし、子ども自身、どこかで気持ちを発散しなければ疲れてしまいますし、それを親に打ち明けられなければ、体の異常として表れることもあるのです。

 小学校高学年になると、自分を認めてもらえない場合、非常に拒否的になり、それがきっかけで学校に行けなくなることも考えられます。そうならないためには、家庭内がいつも、子どもが何でも話せる雰囲気でなければいけません。例えば、その日あった嫌なことや悔しかったこと、腹が立ったことなどを、親がちゃんと聞いてやるだけで、子どもの気持ちはずいぶん楽になると思います。

 中学生になると、環境が小学校の時とは大きく変わります。体も成長し、思春期特有の非常に感じやすく、気持ちが不安定になりやすい時期を迎えます。しかも物事をいろんな角度から見ることがまだできないため、思い込みが強く、自己中心的になることもあります。そんなときは、ちょっとした親のアドバイスによって物事の見方を変え、気持ちを楽に維持させてあげるように心がけてください。例えば、学校の行事や部活動、受験など、親子で話し合う機会を利用して、子どもの気持ちを十分聞いてやるといいと思います。

 これが高校生になれば、将来の社会生活についての関心が非常に高まり、例えば進路などで親と意見が合わないといった問題も多くなります。子どもは親や先生以外の、いろんな立場の人の意見を聞きたがり、徐々に親や先生との間に一線を引いてしまいがちです。

 体も大きくなり、一人前の口を利くようになりますが、まだまだ本音は「親に分かってほしい」と思っているところがあります。高校生の子どもに対しては、大人の私たちも自分の気持ちをきちんと言葉で伝えることが必要です。子どもだけに話させようとするのでなく、大人がまずモデルを示さなくてはなりません。例えば、社会で起きている事件や世間の流行などについて話し合ってみましょう。子どももこの年ごろになると、自分の感じ方や意見などをきちんと言葉にして伝えられます。

 子どもは子どもなりに、日ごろの生活の中で思い通りにいかないことや、人とのトラブルなどで、つらい思いをしています。その一つひとつを乗り越え、人と人とが分かり合えることを知り、お互いの考え方の違いを認め合いながら、心を育てていくのではないかと思います。

 このことからも、家庭は親子ともども、本音が話し合える場であってほしいと思います。