肥後医育塾公開セミナー

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平成12年度 第3回公開セミナー「増え続ける肺がん 予防と早期発見で」

【講師】
日赤熊本健康管理センター診療部・健康増進部副部長
大森 久光

『「肺がんを予防するために?あなたもたばこをやめられる?」』
家族の健康に影響 あきらめずに挑戦


  「たばこを吸っても何ともない人が大勢いるから自分も大丈夫」「たばこをやめるストレスの方が禁煙するより体に悪い」「吸う本数を減らせば健康被害はない」など、たばこをめぐる?誤解?はさまざまあります。  

  喫煙していても長生きする人は確かにいます。しかし、肺がんなどの病気で寿命を縮めている人が多いのは事実。禁煙によるストレスは一時的なものにすぎず、むしろたばこ数本の喫煙でも健康を害する方が大きな問題です。  

  たばこの消費量の増加に伴い、肺がんの死亡率は増加。わが国の肺がん患者のうち、男性で約七〇%、女性で約二六%が喫煙と関係があると報告されています。  

  毎日喫煙する人はたばこを吸わない人に比べ、肺がんの死亡率が相対的に四、五倍も高くなります。しかし、たばこをやめると徐々に減ってきて、十年以上たつと三〇?五〇%のリスク低下が期待できるという報告があります。  

  また、夫が喫煙者だと妻の肺がん死亡率が約二倍高くなるといわれていますが、これも夫が禁煙すれば減少するでしょう。つまり禁煙は家族の健康を考えるうえでも大切なものなのです。  

  実際、喫煙者の七割はたばこをやめたい、本数を減らしたいと考えているようです。しかし、なかなかやめられないのは、たばこに含まれるニコチンへの薬物的依存と、喫煙が生活習慣に密着した心理的依存のためだといわれます。  

  ニコチンは脳内の神経伝達物質として働き、神経の興奮やリラックス効果などをつくり出します。それがある時期を過ぎると、自力での神経伝達物資の分泌能力が低下、ニコチンを補充していないと、不安やいらつきなどが出てきます。この離脱症状とニコチン補充との追いかけっこが悪循環となり、なかなかたばこがやめられないのです。  

  禁煙の方法には、減煙、断煙といった自分で頑張る方法と、薬の力で吸いたい気持ちを抑えるニコチン置換療法があります。ニコチン製剤は医師の処方箋が必要で、自費診療となります。  

  禁煙を始めたら、最初の二週間がヤマ。吸いたい気持ちが続くのは数分間ですから、その間を冷たい水や熱いお茶を飲むなどでまぎらわしてください。たばこを必要としない生活に慣れる工夫が必要です。また、たばこ以外のストレス解消法を身につけることも大切です。また、禁煙後の体重増加を防ぐためにも、食事量に注意するとともに、自分に合った運動を心がけましょう。  

  禁煙とは、自分をコントロールできるようになること。ストレスに強くなり、自分に自信が持てるようになります。だから、一度くらいの失敗であきらめず、繰り返し挑戦してください。