肥後医育塾公開セミナー

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平成12年度 第1回公開セミナー「婦人科癌の予防と治療戦略」

【講師】
熊本大学医学部産科婦人科学講座教授
岡村 均

『女性のからだの仕組み』
?女性に発生する癌の危険因子を理解するために?


   婦人科癌(がん)に限らずすべての癌は、早期発見が大切です。早期発見による早期治療の最大のメリットは患者の希望に沿った治療法が選択できるということです。ごく初期の子宮頸癌であればレーザーで焼くだけで手術の必要はありません。特に子宮頸癌の場合、集団検診の効果が認められています。

 婦人科の癌が多く、なぜ女性に発生しやすいのか。それは女性には性周期があるからです。普通二十八日周期の性周期では、子宮の内膜が黄体ホルモンの関係で非常に厚くなります。妊娠が成立しなければ、組織が剥(はく)脱して出血とともに外に出ます。これが月経です。排卵すると卵巣の表面は傷になります。そこはすぐに修復されなければなりません。だから卵巣や子宮は非常に増殖能力が高いという潜在的な能力を持っています。この傷をふさぎ損なって上皮が中に入り込んだりすると、そういうところから卵巣癌ができやすいといわれています。排卵を繰り返し起こすということは、卵巣癌が起こりやすいことになります。

 また、女性の性器の特徴として腹腔が外につながっていることがあります。腟腔を通じて子宮内に、卵管の内腔を通じて腹腔内にものが直接到達できます。解剖学的に外からウイルスなどが入りやすいわけです。もちろん変な細菌の侵入を防ぐ構造にもなっています。

 要するに、女性は子どもを産むために男性に比べ負担の多い解剖学的、内分泌学的な特徴を持っているため婦人科の癌が多いということになります。

 そこでこれから専門の先生方のお話を聞き、その中から、婦人科の癌のリスクを下げる方法を見いだしたいと思います。