肥後医育塾公開セミナー

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平成20年度 第1回公開セミナー 「脳卒中のリハビリテーション」

【座長・講師】
熊本市立熊本市民病院神経内科部長
橋本 洋一郎

『脳卒中とはどんな病気か』
主役は脳こうそくに変化 まず「高血圧」の改善から


   脳卒中という病気は、先ほどまで元気だった人が卒然として中(あた)ることから、そう呼ばれますが、脳の血管に起こる病気です。血管が詰まる「脳こうそく」と大きな血管から枝分かれした小さな血管が破れる「脳出血」、血管にこぶができて破れる「くも膜下出血」の3つに大別できます。

 結核が「死の病」でなくなって以来、脳卒中は日本人の死因のトップを続けていました。そんな中、脳卒中は血圧が高いと起きやすいことが分かり、健康診断で高血圧を見つけ、食事療法をやる。塩分を減らす。コレステロール値を下げる。薬を飲む―などに取り組んだ結果、脳卒中の死亡が非常に減りました。

 脳卒中の死亡率ががんや心臓病より下がり、救命率が高まるにつれ、脳卒中はいつしか、過去の病気と思われるようになりました。そのため脳卒中を専門にする内科の医師がいなくなり、脳外科で診る病気になりました。

 脳卒中の多くは、手術は不要です。本来は内科の医師が診なければなりませんが、全国的には「脳卒中=脳外科」ということになりました。その点、熊本県は神経内科で積極的に脳卒中を診ており、その後のリハビリ病院、介護施設との地域連携も構築されるなど、恵まれた環境にあります。

 ただ、ある時期から脳卒中の患者が減りにくくなりました。脳卒中の主役が脳出血から脳こうそくへと変わったためです。脳出血は血圧を下げれば減りますが、脳こうそくは減りません。喫煙、糖尿病、肥満、脂質異常などへの対策も必要です。

 誰しも寝たきりのまま長生きしたくありません。実は、寝たきりの原因で最も多いのが脳卒中で、後遺症を持つ方はさらに増えていく傾向にあります。そこで大切なのが予防です。手始めに、高血圧を改善することに努めましょう。

 脳卒中は、生活習慣病とも大きくかかわっています。血圧を下げるために禁煙は絶対条件。節酒や、適度な運動による肥満解消、肉食に偏らない魚・野菜中心の食事などを心掛けてください。

 薬での予防については、薬を数多く服用されている方の中に、「薬は危ないから」と、時々間引かれる方がおられます。しかし、薬は最後のとりで。とりでを捨ててはいけません。どうしても気になる方は、自己判断をせず、必ず医師の相談を受けてください。

 血圧の測定は、朝起きてすぐに行うことが脳卒中の危険度判断に重要です。正常の基準は通常、上が140、下が90未満ですが、自宅血圧では基準値から5を引き、135、85を超えていたら確実に高血圧といえます。

 糖尿病も脳の血管に大きなダメージを与えます。動脈硬化を進め、血栓(血の塊)により脳の血管を詰まらせ、脳こうそくが引き起こされやすくなります。

 高血圧、糖尿病とともに、三大危険因子と呼ばれるのが不整脈。心臓の中に血栓ができやすく、それが血流に乗って脳に運ばれ、脳の血管を詰まらせてしまうためです。原因となる心房細動は高齢者に多く見られ、注意が必要です。