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医療健康情報マガジン「まいらいふ」の監修 [2008/11/14]

「まいらいふ」発行も10年目を迎えました。医療・健康に対する関心がかつてない高まりを見せる中で、大都会を中心に、さまざまな健康関連の雑誌が発行されるようになりました。一方で、医師不足や医師の地域偏在あるいは診療科偏在が社会問題となり、現在もいろいろと議論がなされているところです。そのような状況の中で、医療は最終的には地域で受け持つべき課題だという基本認識の下で、熊本県下の津々浦々まで、正確な健康・医療に関する知見を提供するために開始したのが「まいらいふ」事業です。一時期は、講演会「まいらいふ健康講座」を県内各地で開催したり、テレビ番組「まいらいふ―からだの博物学」の放映を行ったりもしましたが、現在はご存じのように雑誌「まいらいふ」の発行に集約しています。したがって情報提供の対象を熊本県下の家庭においていますが、家庭の健康管理、育児、介護などの多くを主婦が担っている現状を考えて、主婦の役割のそのような側面を医学・医療の専門的立場から応援することを特に目指してきました。また、熊本が誇る美しい自然を背景に、県内各地で元気に頑張っている人たちを紹介しあうことで日々の力の糧を得てもらうことも「まいらいふ」の目的としてきました。
毎月35万部以上発行されている医療・健康雑誌は他にありませんし、熊本日日新聞社の宅配網を通じて確実に配布されてきましたので、発刊時から直ちに県民からの大きな支持を受けてきました。しかし、その一方で問題点がなかったわけではありません。まず、医学内容の「正確な記述と理解されやすさの両立」の難しさです。できるだけ難解な医学用語を減らしてわかり易い記述にしてもらうように、執筆担当の医学部教員にも協力と自己訓練をお願いしてきました。今年度からはさらに踏み込んだ試みとして、医学の専門家ではないライターに医学部教員に各課題について聞き取りをしてもらい、それを原稿に起こすという方法に変えてみました。確かにわかり易くなりましたが、一方で学問的な深さが減ってしまったという指摘も受けています。
2番目の問題は、記事部分と広告部分との明瞭な区別をどう確保するかの問題です。この10年間に経済界は激変しており、初期に広告を出してもらっていた地域の企業や小売業が苦戦を強いられる一方で、健康関連企業の急成長が顕著です。後者は、われわれが「まいらいふ」の発行を必要と考えた要因と重なっているわけでもあります。雑誌発行の経理面を考えると、広告は不可欠です。しかも、成長中の健康関連企業にとっては広告媒体が必要なので、「まいらいふ」のような大部数の健康・医療関連誌は魅了的なものなのでしょう。しかし、読者の方から見た場合、記事内容と広告内容との間に区別がつけにくく混合してしまうことが懸念されます。初期の正確な医学情報の提供という目的が成り立たなくなる危険性が出てきていると危惧されます。この点に関しては、われわれと広告担当の熊本日日新聞社広告局および電通九州との間で対策を模索しているところです。
第3番目の問題は、若い年齢層の活字離れです。インターネットの普及とあいまって、雑誌や新聞の購読率が年々減少しています。この現象は文字文化の低下をきたすので放置できないものだと思います。その一方で、この状況に適応して、健康・医療情報の提供を続けていく必要もあります。肥後医育振興会のホームページに医学欄を設けることも検討課題になっています。しかし、そのような努力によってネットでの情報取得が容易になればなるほど文字離れの方は進むことにもなりかねず、実に悩ましい問題です。
このような難題を抱えた「まいらいふ」ではありますが、この4月号から、表紙デザインを含めて思い切ったリニューアルをしました。若い世代にも対応できる親しみやすさ、読みやすさの追求と、近年の「心の悩み」の増加と介護問題への対処を図ろうとしたものです。すでに賛否双方のご意見が寄せられていますが、みなさまにもご一読の上、忌憚のないご意見をお願いいたします。