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【平成19年度活動報告】第9回人体解剖学実習セミナー・熊本開催 [2008/11/14]

熊本大学大学院医学薬学研究部の形態構築学分野(旧解剖学第一講座)は、夏季休暇中に、人体解剖学研修を行う機会を設けています。この企画は肥後医育振興会の助成と後援を得て実施されています。
一昨年再開された本セミナーは、8月20日(月)から8月31日(金)までの2週間、熊本大学医学部総合研究棟2階解剖学実習室で開催されました。全国から三三名の参加者があり,今年は第三クール目の第三回最終回目であり、主に頭部と骨盤部の解剖を課題として取り組みました。熊本大学の形態構築学分野で開発された解剖術式に則って頭部を頚部内臓とともに摘出を行い、頭部自律神経系や脳神経の剖出と視聴覚器の解剖を行い、三次元での構造と周囲との局所関係を理解するため実際に実物を解剖することで修得しました。また骨盤部の解剖では、熊本大学方式と呼ばれている、左右の寛骨を除去し骨盤出口筋を観音開きする術式に従って解剖を行い、直腸−泌尿生殖器の構造とともに、器官に分布する骨盤内臓神経など自律神経や骨盤内の動静脈の起始・走行・分布の実際を具に観察しました。
人体構造について同胞の遺体を解剖し観察理解するのは、通常医・歯学部の教官か医学・歯部の学生に限られています。この企画は“広く医学医療に関わる人達にも解剖学実習の門戸を開き、実際に人体を解剖し且つ解剖学者による人体の見方や課題を学習し、それぞれの分野での教育・研究・医療実践に生かす”という目標が掲げられています。医学医療が細分化し高度先端医療が求められる中でも、人体の成り立ちや諸構造を有機的に把握することは益々重要になっております。つまり大樹の先端に位置する葉を理解しようとするときに、樹全体の理解の上に立って考える視点が大切です。各器官と周辺の局所関係など実物を見なければとうてい理解できないことを、この研修では十分に剖出観察できます。そして構造の成り立ちを含め人体の精緻さと複雑さを深く勉強することができます。ヒトの身体を大きく捉えることによって、それぞれの研究分野で新たな発想や視点が付け加われば大変すばらしいことだと思います。
またこのセミナーに合わせて、中日の25日(土)には新たに、解剖学研究者を養成するため、研究途上の課題を持ち寄り、問題点や研究の方向性を見いだすための「第3回マクロ解剖学サマーワークショップin熊本」を開催しました。40名の参加者と7題の研究テーマが紹介され,熱心な討論が行われました。
このセミナーやワークショップが今後一層充実し、熊本大学の特色の一つとして全国の医学研究者が解剖学を学ぶため熊本大学に集うようになれば、さらに素晴らしいものになります。このセミナーをこれからも継続し、医学研究者や医療従事者にとって意義のあるものに発展させていくつもりです。本セミナーは全国的にもその意義を認められ、大学の社会的貢献としても注目されております。
なお本セミナーとワークショップの内容を知りたい方は、報告集が僅かありますのでお尋ねください。