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「あれんじ」 2022年11月5日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第105回】メメント・モリ(死を思え)

メメント・モリ(死を思え)

メメント・モリ(死を思え)

 数年前、映画監督の信友直子さんとお話する機会がありました。アルツハイマー型認知症の母と耳の遠い父。老老介護の両親の姿を捉えた「ぼけますから、よろしくお願いします」という映画の試写会後、「介護は、親が命がけでする最後の子育て」という信友監督の言葉が、私の心に強く響きました。
 当時、私は要介護5の父を自宅で介護しており、身近で老いていく父の姿を映画に重ね合わせ、やがては私自身もたどるであろう道に思いをはせていたからです。
 私は40歳になった時、看護師として3交代勤務を続けながら夜間大学で福祉を学びました。修士、博士課程へと進み、ユング心理学、日本のみとりの歴史などを学び、また看護師として多くの死に立ち会った経験から、現在は大学で死生観を育成するための講義も担当しています。
 これから日本は、多死社会を迎えていきます。どこで、どのような最期を迎えたいのか。Quality of death(QOD)=死の質が問われています。
 施設でもみとりの事例が多くなってきました。老いや死を自分のこととして真剣に考えること。また、見送るときにどれだけご本人の思いを受け止められるかが大切だと考えます。
 「メメント・モリ」とは、ラテン語で「死を思え」。限られた生を意識して生きることが、生をいきいきとしたものにするという意味です。
 私が自宅の庭で育てているブルーベリーの花言葉は「実りある人生」。必ず迎えるその最終章が自分らしくあるために、一人一人が健康な時から考え、家族で話し合うことをお勧めします。


介護老人保健施設
ぼたん園
施設長(看護師)
橋口 玲子