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「あれんじ」 2012年7月7日号

【見る・知る・感じる 熊本まつり探訪】
宮原の夏の風物詩 水力で動く舞灯籠(まいどうろう)【宮原地蔵祭】

開催日:8月23日(木)、24日(金)
開催場所:宮原振興局周辺(八代郡氷川町宮原)

九州自動車道八代ICから車で約10分、鹿児島本線有佐駅から徒歩約20分
(問)氷川町観光物産協会(商工観光課内)
☎0965(62)2315

子どもたちの安全願う祈願祭

 宇土、大津の地蔵祭と並び、熊本の三大地蔵祭に数えられる「宮原地蔵祭」。地蔵祭りは、江戸時代初期から伝わる伝統行事で、子どもたちの安全、無病息災を願う目的で始められました。
 毎年8月23日、24日には、造り物が飾られ、多くの見物客でにぎわいます。23日までに仮小屋に地蔵を移し、飾り付け、菓子や果物のお供えものをします。仮小屋の中から道行く人にさい銭をお願いする子どもたちの呼び声が通りに響き、街が活気づきます。


川と暮らす民衆の遊び心から誕生?

 造り物は、世相や動物などを題材としたものが目立ちます。最近は造り物が大型化し、大きさや高さを競うようになってきました。熊本の地蔵祭の造り物は他県と比較すると大型で有名です。また、見せ方も担ぐスタイルから引くスタイルに時代とともに変わっていったといいます。
 宮原地蔵祭では、このように大きな造り物が町内の数カ所に展示されます。その中で特徴的なのは、川に浮かぶ「舞灯籠」です。川の流れを利用し、人形を回すユニークなしかけは他には見られないもので、同地区の夏の風物詩となっています。
 舞灯籠のように水の力を利用して動く造り物が見られるのは、県内の地蔵祭でもここだけ。川と共に生活していた人々の遊び心≠ゥら生まれたのかもしれません。


【教えてください】「造り物いろいろ」

 熊本では地蔵祭りだけでなく、造り物を取り入れた祭りがとても多く、その数は西日本の祭りで見られる造り物の2/3を占めるともいわれています。雨乞いでも造り物を作りますし、明治時代には140人もの人が入る大型の造り物を作ったという話も残っています。
 造り物は大阪文化の影響を受けているといわれていますが、九州のほぼ中央に位置する熊本に、なぜこのように根づいたのか興味深いところです。
 造り物はもともと「風流」という芸能の一種で、きらびやかさを競うものです。高森の風鎮祭では、造り物が人情味豊かなにわか≠ニ連動しているため、にわかの内容を象徴する造り物になっています。(談)

熊本大学60年史編纂室長(前熊本大学大学院 社会文化科学研究科民俗学教授)
安田 宗生氏