【熊遊学(ゆうゆうがく)ツーリズム】
過去から現代日本が見える「西洋史学」
先端の研究者をナビゲーターに、熊本の知の世界を観光してみませんか! 熊本大学を中心に地元大学の教授や准教授が、専門の学問分野の内容を分かりやすく紹介する紙上の「科学館」「文学館」。それが「熊遊学ツーリズム」です。第17回のテーマは「西洋史学」。さあ「なるほど!」の旅をご一緒に…。 |
【はじめの1歩】 |
西洋史の中でもイギリスは、シェークスピアとディケンズ、エリザベス一世とビクトリア女王、ロンドンの喧騒(けんそう)とピーター・ラビットが駆け回る静かな田園…と、さまざまな物語がよぎります。ワクワクしながら、中川先生の研究室のドアを叩きました。 |
Point1 「王様から庶民へ」歴史学の歴史 |
歴史学は、19世紀のドイツで生まれました。当初は政治が研究の中心でしたが、もっと社会や文化に目を向けて“エリートの歴史だけではなく庶民の生き方や考え方を研究しよう≠ニいう研究者たちが現れ「社会史」という分野が生まれました。 |
Point2 イギリスで夏目漱石も受けた国勢調査 |
中川准教授の専門はイギリス史。16〜18世紀初頭にかけてのイギリス庶民の文化や生活様式、行動様式を研究しています。 |
Point3 イギリスの文化・経済に貢献した移民たち |
ヨーロッパで宗教改革が起こり、イギリスは英国国教会というプロテスタントの国になりました。そこで、迫害されていたプロテスタントの一派であるカルヴァン派(ユグノー)の人々が、大陸から庇護を求めて大勢イギリスに移住してきました。16世紀後半には、1万〜1万5000人、17世紀後半には4万〜5万人の移民が入ってきたといわれます。 |
Point4 紅茶と砂糖 |
大英帝国の時代、イギリスは広大な植民地を最大限に利用して貿易を行っていました。その代表例が紅茶と砂糖です。 |
【なるほど!】 |
国の歴史も個人の歴史も、周りとの関係の中で紡がれていきます。よりあわされて複雑に絡んだ歴史の糸をほぐしていくのは、根気も要りますがなかなか興味深い研究です。中川先生のお話を聞いて「ものの考え方を教えるのが大学なんだ」と改めて思いました。 |
【メモ1】 「妻を売ります」というチラシの謎 |
男女間の問題も、歴史研究の重要なテーマです。 |
【メモ2】イギリスの「国民食」はカレー? |
17世紀以降になると、移民が入ってきたことでイギリスの食卓もバラエティー豊かになっていきます。 |
【メモ3】労働者を紅茶好きにした禁酒運動 |
マンチェスター近郊の女工の昼休み
産業革命時代の女工たちは昼休みにも茶を飲むようになった。絵のほとんどの人が、ポットを持っている イギリス人は1日に4杯紅茶を飲むと言われます。多い時は7杯という時代もありました。18世紀ころには上流階級だけでなく、労働者階級もたくさん紅茶を飲むようになりました。 |
ナビゲーターは |
熊本大学文学部歴史学科
西洋史学 中川順子准教授 歴史学は、史料という証拠を手がかりに探偵のような推理力で人類の歩みを探求するダイナミックな学問です。 |