肥後医育塾公開セミナー

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平成29年度 第2回公開セミナー「正しく知ろう乳がんのこと」

【講師】
熊本大学医学部附属病院 がんセンター 外来化学療法センター長
陶山 浩一(すやま こういち)

『講演B 抗がん剤は怖くない』
医療者との信頼関係を構築して適切な抗がん剤副作用対策を


   一般に、抗がん剤治療は「きつい」「つらい」というイメージがあります。それは、抗がん剤は普通の薬剤と比べると、がん細胞とギリギリの格闘をしなければならないので、副作用が出やすいという特徴があるためだと考えられます。
 まず、抗がん剤治療の目標は大きく分けると、「治癒」「延命」「症状緩和」の3つに集約されます。そして目標に応じ、抗がん剤治療のやり方は変わります。
 治癒を目指す代表的な場合は、手術の前後に行う化学療法です。また、白血病など血液腫瘍のように、抗がん剤のみで完治を狙う場合もこれにあたります。
 延命が目的になるのは、進行がんで転移がある場合など、抗がん剤治療で治癒を望めないケースになります。ただその場合も、現在は非常に長く寿命を延ばすことができるようになりました。
 症状緩和は、抗がん剤治療でがんの勢いを抑えることで、症状を緩和する効果を期待して行い、治癒と延命にも関連します。
 一方の抗がん剤の副作用には、吐き気や食欲不振、口内炎やだるさなどがあります。髪の毛が抜ける、手足がしびれる、皮膚が荒れる、便秘や下痢になることもあります。また、白血球が下がり感染症にかかりやすくなる、赤血球が減少し貧血になる、その他、アレルギー反応、肝臓や腎臓に負担がかかることもあります。
 ただ、このような副作用は、かなり対策を立てることができるようになっています。例えば「吐き気対策」では、「制吐薬適性使用ガイドライン」を日本癌(がん)治療学会が出しており、抗がん剤の吐き気が出るリスクに応じて吐き気を抑える薬を予防的に使います。「感染症対策」では、38度の体温を目安に熱が出たら病院に連絡する、抗生物質を早めに飲み始める、白血球を増やす注射を使う、などを行います。その他、だるさ、脱毛、しびれ、皮膚障害などのいろいろな症状に応じた対策があります。
 これらの副作用をうまく我々医療者が評価するためには患者さんからの訴えも重要です。そのためには、患者さんと医療者との良好なコミュニケーションが必要です。主治医や看護師さん、薬剤師さんといった医療者とはぜひ、良好な信頼関係を構築していただきたいと思います。
 日本人の死因の1位はがんです。これから先は、がんとの付き合い方が多くの人の課題になると思います。これまでの古いイメージともいえる、「がん=死」については、日本人全体で見直す必要があると思います。
 ぜひ、皆様の有意義な人生のために抗がん剤を利用してやる、ぐらいの気持ちで、正しい知識のもと、必要に応じて抗がん剤と付き合っていただければと思います。