肥後医育塾公開セミナー

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平成29年度 特別版 熊本地震シンポジウム2017公開セミナー エコノミークラス症候群

【講師】
熊本市民病院 首席診療部長・神経内科部長
橋本 洋一郎(はしもとよういちろう)

『講演E 大災害時の脳卒中予防』
復興は体と心の健康から


   災害時には循環器疾患が増加します。東日本大震災のときは、心不全や心筋梗塞、脳卒中が増えました。脳卒中になると、歩けなくなり、話せなくなり、食べられなくなります。エコノミークラス症候群だけでなく、こうした脳心血管疾患の予防も必要だと考えています。実際に熊本地震後、熊本市内では脳卒中が1.17倍に増えました。
 脳卒中は、生活習慣の乱れがあって、高血圧や糖尿病、脂質異常症や動脈硬化などが徐々に進行し、ある日、倒れるわけですが、災害が進行を加速させます。
 東日本大震災の際に作った脳卒中の予防啓発ポスターを、熊本地震ではチラシにして配布しました。「夜はなるべく消灯し、6時間以上眠る」「1日20分以上歩く」「塩分を減らし、野菜や果物、海藻類を食べる」「震災前と体重があまり変わらないように注意(増減2キロ以内)」。そして、「マスク・手洗いをする」「十分な水分をとる(1リットル以上)」「降圧薬など薬は続ける」「自分で血圧を測定し、140ミリHg未満を維持」という内容です。通常の血圧は135ミリHgですが、災害時は5ミリHg高い値になっています。これは、阪神・淡路大震災のときの、自治医科大の苅尾七臣(かりおかずおみ)医師による災害時の循環器予防リスクスコアです。
 平均寿命が延びている中で、男性で10年間、女性で13年間、人生の最後に健康でない期間がありますが、大事なことは元気で長生きすることです。日本人の死因の上位4つは、がん、心疾患、脳血管疾患、肺炎ですが、これらは全て、たばこに関連した疾患です。それで私は2009年から禁煙推進活動を行っています。
 また、寝たきりの一番の原因は脳卒中、認知症、高齢による衰弱、転倒骨折になります。「フレイル」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。これは高齢による衰弱を指しますが、一方で運動や食生活の改善などにより、介護予防が可能になるという意味で使われます。
 最後に一言だけ、「一に運動、二に食事、しっかり禁煙、最後に薬」です。熊本の復興には、まず健康が大事です。体調管理には気を付けましょう。