【体験発表】 |
『疾患と共に歩むこと 〜私のストレスケア〜』
病気と共存し自分らしく
私は精神疾患の当事者で、病歴は33年になります。18歳の春、眠れなくなったことから幻覚を見るまでになり、病院の精神科に2週間入院しました。初めての精神科への入院は、私の心に深い傷を残しました。
在学中の短大を休学し、退院後はカウンセリングを受けました。当時は何事にも関心を持てず、涙が止まらず、歩行も困難な状態でした。
しかし、発症から1年がたった翌年の春、奇跡的に病状が良くなって復学がかない、その後も幸運なことに証券会社に就職できました。
服薬のために体力が落ちていたことが影響して、会社員としては2年間しか勤めることができませんでしたが、その間に得たものは大きく、当時の友人とは今も交流が続いています。退職後は社内恋愛をしていた人と結婚しました。そして、夫の仕事の都合で海外を転々とする生活を送り、娘を1人授かりました。
しかし、30歳ごろから離婚を考えるようになり、41歳でやっと離婚が成立しました。別居による環境の変化など離婚に関係するストレスが影響してか病気を再発し、43〜45歳までの2年間で4回も精神科への入退院を繰り返しました。
もうリカバリー(社会復帰)は無理と、主治医も諦めていたのですが、担当の看護師さんに勇気づけられ、私は思い切って主治医を変えてもらいました。新しい主治医とは良い関係を築くことができ、それだけで病状が良くなりました。その後私は、精神疾患の当時者を支える「ピアサポーター」という仕事に就くことができました。
“ピア"とは仲間を意味します。そしてピアサポーターは、自分の疾患や障がいからくる経験を強みにできる唯一の仕事です。この仕事に就いたことで、自分の人生を肯定できるようになったと思います。今はこまめに休養の時間を取り、疲れをためないよう気を付けています。
私は「リカバリー」とは、単純に病気を発症する以前の状態に戻ることではなく、病気と共存しながら自分らしく生き、苦労を糧にして人生に意味を見いだすプロセスのことだと考えています。
精神疾患の当事者は、その負のイメージによって自尊心が散々に傷つけられ、生きる意味を見出せないでいます。それでも疾患は私たちの一部でしかなく、本当はたくさんの健康的な部分もあるのです。そのことをより多くの皆さんにご理解いただけば、差別や偏見のない社会へ近づくのではないかと思います。