【講師】 |
『講演A 男性の排尿障害 〜前立腺肥大症について〜』
物理的・機能的に尿道が閉塞 薬剤と手術で悩みを改善
前立腺肥大症の診断と治療は、日本泌尿器科学会が定めたガイドラインにのっとって行います。
まず超音波検査装置で、尿道を圧迫する前立腺の大きさ「腫大(しゅだい)」を測定。次にウロフロー検査で、排尿の勢いから前立腺の「閉塞」を調べます。さらに、残尿感がある、頻尿、排尿のため夜に何度も目覚めるなどの「症状」をIPPS(国際前立腺症状スコア)などを使って確認します。この他にも、残尿測定や検尿などを行い総合的に診断します。前立腺肥大症と前立腺がんは全く違う病気ですが、がんの可能性も念頭に置きながら、診断を行っていきます。
治療の最大の目的は、排尿の悩みを改善してQOL(生活の質)を上げることにあります。前立腺肥大症は、尿道が“物理的に閉塞(へいそく)"している場合と、前立腺がむくんでいる、感染を起こしているなどにより“機能的に閉塞"している場合に分けられます。
治療ではまず、生活指導や薬物治療を行います。薬物治療では、α1アドレナリン受容体拮抗薬という薬を最初に選択します。効果が早く表れ、副作用が少ないという利点があります。前立腺が巨大な場合は、α5還元酵素阻害剤を併用します。ただ、尿意切迫感が強い過活動膀胱を合併している場合もあり、実際には症状や状態に合わせて使い分けます。
薬物療法で症状の改善が不十分、重症または合併症がある場合は、外科的な療法を選択します。手術では、前立腺を「切除」、あるいは「蒸散」することにより尿の通り道をつくりますが=前ページ講演A図=、患者さんに合った方法を選びます。
最も行われている手術は、経尿道的前立腺切除術(TURP)で、ペニスの先からカメラを入れ、高周波電流が流れるメスで前立腺を削っていきます。また、ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)は、内視鏡の先に付いたレーザーメスで、前立腺腺腫を隔離・核出(無傷で取り除くこと)します。
手術に伴う合併症には、出血、尿失禁、勃起障害、精液が膀胱に向かう逆行性射精などがあります。
この他、医療技術の進歩により、患者さんへの負担の少ない手術も行われています。今後はさらなる治療成績が期待されるでしょう。