肥後医育塾公開セミナー

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平成26年度 第1回公開セミナー「生活習慣から消化器の病気を考えてみよう」

【講師】
熊本大学大学院生命科学研究部消化器内科学分野 助教
渡邊 丈久

『講演(3) 意外と怖いぞ、脂肪肝』
脂肪肝なら注意信号


  肝臓は働きがおかしくなっても、ギリギリまで症状が出ない「沈黙の臓器」と呼ばれています。肝臓には腸で吸収した栄養分が血液に乗り運ばれてきます。腸から送られてくる血液に脂肪分が多くなると、肝臓に脂がたまり始めます。これが脂肪肝の始まりです。
 検診時に肝機能異常とされた人の大半は脂肪肝です。以前は過度な飲酒で脂肪肝になるケースが多かったのですが、最近は肥満が原因の脂肪肝が増えています。前者はアルコール性脂肪肝、後者は非アルコール性脂肪肝(NAFLD=ナッフルディー)といわれます。
 4大肝臓疾患といわれるのは、B型肝炎、C型肝炎、アルコール性脂肪肝、NAFLDです。全国にB型肝炎患者は110万〜130万人、C型肝炎患者は170万〜200万人、アルコール性脂肪肝の人は約250万人といわれますが、NAFLDの人は1000万〜2000万人に上るといわれます。NAFLDが桁違いに多い理由は、肥満人口が多数に上ることが背景にあります。
 ただ、NAFLDの中には、肝臓があまり弱ることがないタイプの脂肪肝(NAFL=ナッフル)と、長い間肝炎が続き肝硬変や肝臓がんを起こす非アルコール性脂肪肝炎(NASH=ナッシュ)があり、NASHの人は国内に100万〜200万人いると推定されています。
 NAFLDおよびNASHは、生活習慣が原因で起こると考えられています。まず生活習慣が肥満を起こします。肥満によってインスリン抵抗性が起き、高血糖・高血圧・高脂血症が起きて、メタボリックシンドロームになります。メタボリックシンドロームになると、その後はドミノ倒しのように、糖尿病、腎症、動脈硬化症などを起こし、人工透析、失明、心不全などを起こしていきます。これを「メタボリックドミノ」と呼びます。このドミノは生活習慣が起点ですから、一番大事なことは生活習慣を改めることです。脂肪肝は健康の注意信号と考えてください。
 治療は食事療法でカロリー摂取を制限し、運動療法でカロリー消費を促すというイメージです。うまくいかない場合は、高血糖、高血圧、高脂血症など、それぞれの病態に対する薬を使った治療を行います。