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『講演(1) 生活習慣からおきる食道の病気〜逆流性食道炎と食道がん〜』
喫煙と飲酒はリスク大
逆流性食道炎は、胃酸が逆流することによって生じる食道の炎症で、胸やけや胃もたれなどの症状を起こします。その他に、鼻炎や虫歯、喉の違和感、胸の痛み、睡眠障害といった食道や胃以外の病気でも、逆流性食道炎が関係しているケースがあります。
生活習慣との関係では、まず喫煙と飲酒が挙げられます。喫煙習慣のある人はない人に比べ約2倍、飲酒は約1・5倍、逆流性食道炎になりやすくなります。また、食後すぐに寝る人は約7倍、肥満の人は腹圧の影響で胃酸の逆流が起こりやすくなり、1・5〜2・5倍症状が出やすくなります。
逆流性食道炎に対する生活習慣の改善策としては、肥満を抑えるために運動をする、刺激の強いものや高脂肪の食べ物を避ける、食後3時間以上たってから寝る、胃酸の逆流を抑えるため寝るときは頭を高くする─などをお勧めします。生活習慣の改善でも治らない人には薬物療法を行いますが、症状がひどい場合には、胃酸の逆流防止手術を行うこともまれにあります。
食道がんは、早期に発見しないと怖いがんです。食道は厚さが4ミリ程度と大変薄いため、がんができると浸潤しやすく、周囲にリンパ節がたくさんあるので、他のがんに比べて転移しやすい傾向にあります。
ごく初期の食道がんには特別な症状はほとんどありません。たまたま健康診断で見つかるケースが2割ほどあります。進行すると胸焼け、つかえ感などの症状が出ますが、逆流性食道炎と非常に似ているため、症状だけで食道がんと診断することはできません。
食道がんの原因は、喫煙と飲酒、熱い食べ物による炎症が3大要因といわれています。喫煙と飲酒の習慣のある人はない人に比べ、17倍も食道がんのリスクが高まります。また「フラッシャー」といってコップ1杯のビールで顔が赤くなっていた人が、お酒に慣れて飲めるようになった場合のリスクが非常に高いといわれています。
食道がんの検査には小さな病変を直接観察できる内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)をお勧めします。初期の食道がんであれば、内視鏡治療が受けられる可能性があります。その場合、体を切らずにがんを残さず切除することが可能で、治療後の体の負担が手術に比べ非常に小さくて済みます。ただ、ごく初期の食道がんにしか内視鏡治療は適用できないので、やはり早期発見・早期治療の実践が重要です。