【講師】 |
『《講演B》食生活で早めの「ロコモ」対策』
骨と筋肉づくりの食事を
「ロコモ」は栄養と深い関わりがあります。太り過ぎると膝や腰に負担が掛かり、やせ過ぎると骨や筋肉の量が減り、運動機能の低下を招きます。日ごろの食生活を見直し、健康的で丈夫な体をつくり、ロコモを予防することが大事になります。
ロコモ予防のため、食生活で大切なことは@骨と筋肉づくりのための食事を心掛けるA肥満に注意し体重を管理するB早めの対策を心掛けるの3つです。2010年の国民栄養調査によると、日本人のカルシウム摂取量は不足しています。1日の推奨量600ミリグラムに対し平均で503ミリグラム、骨粗しょう症の予防には700〜800ミリグラムの摂取が必要です。
カルシウムを多く含む食品は、乳製品、大豆製品、小魚の丸干し、干しエビ、小松菜など。中でも牛乳は、1杯に約200ミリグラムのカルシウムが含まれ、吸収されやすいのです。牛乳が苦手な方は料理、おやつ、飲み物などに加える方法もあります。ただ、骨を強くするのはカルシウムだけではありません。弾力性など骨の質を高めるタンパク質、カルシウムの吸収を助けるビタミンD、骨の形成を促すビタミンKも大事です。
タンパク質は肉、魚、卵、大豆製品、乳製品、ご飯などに含まれています。成人は1日にご飯を3杯、牛乳を1杯飲めば、後は主菜(肉、魚、卵、大豆製品)として1皿が目安で、肉や魚であれば手のひら半分の大きさを食べれば十分。過不足なくバランスの取れた食事が大切です。特に高齢者は腎機能が低下しますので、タンパク質を取り過ぎると腎臓に負担を掛けますので注意してください。
ビタミンDは魚や干しシイタケ、卵などに含まれ、日光を浴びると皮膚で生成されます。ビタミンKは納豆や緑黄色野菜に含まれています。毎食食べる野菜のうちの1皿を、緑黄色野菜にするといいと思います。
丈夫な骨づくりを妨げるものとして注意が必要なのは、インスタント食品、ウインナーやハム、練り製品などの加工食品の保存料として含まれるリンというミネラル、それからアルコールと塩分の過剰摂取です。
減量が必要な人は、主菜の肉を魚や大豆製品に代える、野菜料理を毎食食べる、洋食や中華より和食を多くして油を控える、間食のお菓子を果物や乳製品に代えるなど、食事の内容全体を見直すといいでしょう。
逆に高齢者で痩せている人は、外出などでしっかり体を動かし食欲を増やしておいしく食べる、食材や調理法に変化をつける、料理もリハビリと考えて、3度の食事を欠かさない、1度の食事量が少ない人は回数を増やす、かむ、飲み込みが難しい場合は軟らかくする、とろみをつける─などの工夫を試みてください。
骨密度は20歳代までに完成するため、偏食や無理なダイエットは危険です。女性は閉経のころからホルモンの減少で骨がもろくなります。男性は50歳、女性は40歳から骨を意識して必要な栄養を取ってください。
サプリメントもありますが、特定の成分の過剰摂取の弊害もありますので、さまざまな栄養素が自然に取れる食事を優先してください。
主食、主菜、副菜を基本とした正しい食生活を早めに身に付け、健康寿命を延ばしましょう。