肥後医育塾公開セミナー

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平成25年度 第2回公開セミナー「心臓病にならないために」

【講師】
熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学
山部 浩茂

『《第3部 治療/不整脈・狭心症、心筋梗塞の観点から》 講演4 心房細動の診断と治療』
抗不整脈薬 まず投与


   心臓の中には電気が流れる通り道があり、心室に電気が伝わって心臓の伸縮が起きる仕組みになっています。心房細動は不整脈の一種で、心臓が規則正しく収縮しなくなることで動悸(どうき)や目まい、胸痛や不快感などの症状が表れます。40歳代から症状が表れやすく、年齢とともに増加。男性に多いのが特徴です。
 心房細動は、7日以内で自然に発作が止まる「発作性心房細動」、薬物投与や電気ショックをしないと止まらない「持続性心房細動」、薬物でも電気ショックでも治まらない「慢性心房細動」の3つに分類されます。発作が続くと、心房内に血栓が形成されることがあり、この血栓がはがれると、心原性脳塞栓(そくせん)症や四肢の動脈塞栓症などの原因となります。
 血栓が脳に詰まると脳塞栓症を起こし、意識障害や、全身にまひやしびれが出ます。また、四肢の動脈などに詰まると手足の動脈の拍動が触れなくなり、手足の痛みや冷感が出現したりします。
 脳梗塞の病型には、脳の奥の小さな血管が詰まって起きる「ラクナ梗塞」、比較的大きな動脈が硬くなり血栓ができる「アテローム血栓性脳梗塞」、心臓にできた血栓性の塊が血管を流れて脳の血管に詰まる心原性脳塞栓症があります。中でも心原性脳塞栓症は、脳梗塞病型の27%を占め、他の脳梗塞に比べ予後が不良で、患者の半数に重い障害が残るか死に至ります。心不全や高血圧、75歳以上、糖尿病、脳卒中の既往がある―などがリスク因子です。心原性脳塞栓症の予防には、今は使いやすい経口抗凝固薬が登場しています。
 心房細動は心電図で診断できますが、発作がたまにしか起きない患者さんには24時間、心電図を記録できるホルター心電図検査を行ったりします。それでも発作時の心電図が記録できない場合は、携帯型心電計を携行してもらい、発作時に患者さん自身で心電図を記録してもらったりします。
 治療には、まず抗不整脈薬を投与し、それでもコントロールが難しいときは、血管を通して細いカテーテルを心臓に入れ、その先端から高周波を流すカテーテルアブレーションか、慢性の患者さんの場合、心拍数のコントロールを行うのが一般的です。